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日銀議事録に見るツイスト・オペの効果に対する疑問

 9月20日から21日にかけて開催されるFOMCでは、「FRBのポートフォリオにおける資産の平均残存期間の長期化を促す」政策が取られるのではないかとの期待が出ている。つまりこれはFRBが保有する短期国債を売却し、比較的長期の国債を同時に購入するツイスト・オペもしくは、オペレーション・ツイストのことである。

 このツイスト・オペは1961年のケネディ政権下で、ドル防衛の為の短期資本を流入させるための短期金利の上昇とともに、設備投資促進などによる景気対策としての長期金利低下の両方の効果を促すため行なわれたことがある。

 実は日本でも昔、このツイスト・オペの導入が議論されたことがあるのをご存知であろうか。1999年2月5日に当時の宮沢蔵相が日銀に対してツイスト・オペの検討を要請したいとの国会答弁があったのである。

 その蔵相発言から一週間後の2月12日に開かれた日銀の金融政策決定会合では、このツイスト・オペについて植田和男審議委員(当時)が次のように発言している。

 「長期債の市場に直接働きかける手段は・・・具体的な手段としては、長期国債の買いオペの増大、あるいはネットでの債券買い増しが敬遠されるのであれば、ツイスト・オペのようなことが考えられる。ツイスト・オペは効かないというのが過去のいろいろなデータから平均的に出ている結果のような気がする。特に、国債に関するツイスト・オペは色々な国で何回か行なわれているが、効くにしても効果は小さいというのが平均的な結果である。ただ、実行してみなくてはわからない面もあるし、中央銀行が行なうオペは全てツイスト・オペであるという言い方も出来るかと思う。」

 また、山口泰副総裁(当時)もツイスト・オペに関して次のような発言をしている。

 「債券市場に対する直接的な介入は、買い切りオペ、ツイスト・オペを含めて採るべき政策ではない。ひとつには長期金利は中央銀行が直接コントロールすることが原理的に出来ないと思うし、従って適当でもない。原理的に出来ないのは、長期金利にはやはり様々なエクスペクテーションが全て流れ込んでくる訳であるし、それを金融政策にとって都合の良い方向に誘導していくことは極く短期にはともなく、サスティナブルなベースでは出来ないのではないか」(以上、1999年2月12日、日銀金融政策決定会合議事録より)

 1999年2月12日の日銀の金融政策決定会合では、ツイスト・オペの実施は決定されなかったが、この会合で実質的な「ゼロ金利政策」が導入されることになる。これは上記の議論を見てもわかるが1998年12月の運用部ショックによる長期金利の上昇と、それを危惧した米国からのプレッシャーが要因であった。つまり、あくまで長期金利の上昇抑制が目的であったといえる。

 これに対して、今月20日から21日にかけてのFOMCでは、雇用の悪化などを受けて米経済のリセッション入りを懸念しての追加緩和が期待されていることで、長期金利の上昇抑制が目的ではない。むしろ米国の長期金利は、すでに2%を割り込むなど歴史的低水準にいるような状態にある。

 それでもツイスト・オペが検討課題に挙がっているのは、他に採りうる手段が限られているためと思われる。8月9日に打ち出した時間軸の明確化も同様であろう。これもより長めの金利低下を促すことが目的であり、その効果を高める上でもツイスト・オペの検討も打ち出されているのであろう。

 しかし、それによる効果については長期金利がすでに大きく低下していることもあり限定的であることは確かであり、すでに1999年に日銀で議論されていた内容からも、極めて限定的との見方が示されていた。

 しかし、市場ではこのツイスト・オペに対して期待も強い。アナウンスメント効果を意識すれば、ツイスト・オペの実施は極めて短期的ながらも多少なり市場心理に働きかけることも想定される。はたしてFRBはツイスト・オペを実施するのか。それとも1999年の日銀の植田委員や山口副総裁のようにその実質的な効果に疑問を呈する委員もいることで、導入は見送られるのか、そのあたりの動向も注目されよう。


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by nihonkokusai | 2011-09-09 09:41 | 日銀 | Comments(0)
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