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野田首相誕生の意味と財務相人事

 8月29日に行なわれた民主党の代表選挙は、決選投票の結果、野田財務相が215票、海江田経済産業相が177票となり、野田財務相が民主党代表に選出された。新代表は30日に衆院本会議で第95代、62人目の首相に任命された。

 野田氏は早くから代表選出馬の意向を示し、有力候補とみられていた。しかし、その代表選には野田氏を支援するとみられていた前原氏が出馬を表明し、小沢グループの支持を受けた海江田氏も立候補、さらに鹿野氏、馬渕氏も立候補したことで、むしろ野田氏は不利との見方が強まっていた。

 この5人の候補の中で、復興増税に前向きであったのは野田氏だけであり、民主党内部にも反増税派がかなり多いとみられ、圧倒的に不利かと思われていたが、最終的には野田氏が選出されたのは何故なのであろうか。

 民主党代表選は最終的には小沢か反小沢かの対立であった。小沢氏と鳩山氏のグループは、民主党内で最大勢力となっていたが、それだけでは代表に選出されるための過半数に届かない。反小沢派は決選投票に持ち込むことにより、反小沢が結集し最終的には逆転勝利するというシナリオを描いていたものと思われる。ただし、それでは小沢氏の推す海江田氏に立ち向かう候補は誰になるのかが、大きな焦点となっていた。

 主流派が野田氏と前原氏に分かれ、さらに鹿野氏もそれなりの勢力を持つ。馬渕氏は今回はとりあえず出馬したという事実が重要と思われ、決選投票に残る可能性は薄かった。結局、主流派の野田、前原が2位争いをしたわけだが、すでに代表選前に野田氏優位との見方が強まっていたようである。これには前原氏では外国人献金問題などから野党の追求を受けやすく、長期政権は難しいとの見方もあったのかもしれないが、地味であまり目立たないが堅実な野田氏にかけてみようとの見方も強かったものとみられる。

 しかし、それだけが野田氏勝利ではないと思われる。民主党内にはリフレ派と呼ばれるように財政再建の動きとは方向性が反対の人達が存在し、その人達はいろいろなところで声を張り上げている。今回の立候補者の中でも馬渕氏もそれに属している。しかし、民主党内部にも財政再建に取り組まないと国が持たないという意識を持つ議員も多数存在しているとみられ、そういった議員の票も野田氏に向かったことで、勝利を導いた可能性がある。

 もしも今回、野田氏以外の人物が首相となり、財政再建よりもデフレ脱却を最優先するようなことになれば、米国や英国、さらにフランスやドイツなどユーロ圏の国々が進めている財政健全化の動きと正反対の動きをすることになる。これらの欧米の国々からはむしろ日本の財政が心配されていることは、歴代の財務相は国際会議などを通じて感じていたはずである。「日本は大丈夫か」とこれらの国々に心配されているにもかかわらず、財政再建の動きを放棄するような首相が日本で登場すれば、心配を通り越して呆れられてしまう。そして、真剣に日本の財政問題を意識するようになり、それがマーケットにも影響を与えると、日本国債の価格形成にも影響を及ぼしかねない。

 つまり日本はすでに財政再建を放棄できるような状況にはなく、それがよくわかっていないのは、国会議員の一部であるとも言える。もちろん景気を良くしなければ、税収も増えず財政再建も進まない。しかし、そのために国債を増発することや、日銀に国債を引き受けさせて国債の信任を傷つけてしまうと、今度は国債問題が浮上して身動きがとれなくなる。何をおいてもカネというのではなく、規制緩和や国際協力を進めるなどの手段もあるはずである。

 野田氏が首相となることで、とりあえず日本の財政再建の方向性は確保された。あとは国会、さらに民主党内部のねじれの中で、震災復興、景気回復、そして財政再建に向けてどのような対策をとるべきか、新首相のリーダーシップの元で検討し推し進めていくほかない。地味な印象のある野田氏であるが、その分、人当たりの良さとともに粘り強さも持っているようで、これまでの民主党政権とは一味違う政権となってくれることを望みたい

 ただし、財務相人事については、少し課題も残しそうである。9月2日の野田内閣の組閣人事で、財務相に安住淳国会対策委員長が内定と報じられた。官房長官を固辞した岡田前幹事長が財務相かとの見方も出ていたが、岡田氏は財務相についても固辞したとみられる。このため、財務相に誰が就任するのか、あらためて注目されていたが、安住淳国会対策委員長が就任するようである。

 安住淳氏のプロフィールをご本人のサイトなどで確認すると、東日本大震災で被災された宮城県石巻市で昭和37年に生まれる。早稲田大学社会科学部卒業後、NHKに入社し政治部記者などを経験。その後、衆議院総選挙に出馬し、平成8年10月の第41回衆議院総選挙に出馬し初当選。防衛副大臣などを経て昨年1月に民主党国会対策委員長に就任した。

 市場参加者にとり、まず気掛かりとなるのは、安住淳が増税派なのか反増税派なのかという点かと思うが、さすがに野田新首相が選んだだけに、財政再建派、増税派の一人のようである。

 たとえば、今年7月のテレビ番組で東日本大震災の復旧・復興で被災地自治体の首長から国政への不満が出ていることについて、「首長は増税しないのだから(批判されにくい)。国からお金をもらって自分は言いたいことを言って、出来なかったら国のせいにする。自分たちは立派なことを言うが泥はかぶらない。この仕組みは何とかしなければいけない」と批判した(読売新聞)。表現方法はどうかと思う部分はあるものの、少なくとも増税については推進派であることは確かのようである。

 以前には、「消費税は今後の社会保障の財源として使うべきだ」との発言もあったようである。

 また、安住淳氏は7月に、郵政改革法案の早期成立を強く要求している国民新党について「自民党から政務官1人を引っ張り、自民党の態度を硬化させておいて、民主党の国会対応が悪いと言う。どこかの国の瀬戸際外交みたいだ。異様な対応をとる人たちが連立政権のパートナーとなっている」と述べている(産経新聞)。

 これまでの安住氏の発言については、このようにやや棘があるものが報じられるなどしており、市場は財務相の発言には、言葉の端にまで注意を払うこともあり、かなり注意する必要がある。

 安住新財務相は、財政健全化路線を継続するとみられるが、その手腕については未知数である。まずは難航が必須とみられている第三次補正予算の編成や、それに絡んだ増税論議等が控えている。また、株式市場では増税による悪影響、債券市場では財政健全化に向けた動きや日銀との関係、さらに外為市場では円高対策等について、財務相の発言を注視するとみられる。その発言内容によっては市場に波乱を与えかねず、注意も必要となろう。まずは来週マルセイユで開かれるG7などでの安住財務相の発言内容なども注視したい。


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by nihonkokusai | 2011-09-03 09:51 | 国債 | Comments(0)
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