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バーナンキ議長の講演に見る次の一手

 ワイオミング州ジャクソンホールで開催されたカンザスシティ連銀主催のシンポジウムにおけるバーナンキFRB議長の講演内容が注目された。これは昨年の同シンポジウムの講演で、バーナンキ議長がQE2を示唆したため、今回も何らかの追加緩和を示唆するのではないかとの期待があったためである。

 過去の歴史を見ても、ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムでは興味深い出来事が多く、そのために注目度が高い面もあった。その理由としてこのシンポジウムはある程度、マスコミ等から遮断されての意見交換の場もあるとみられ、著名学者などとともに、トリシェECB総裁や日銀の白川総裁も出席しており、金融関係者によるダボス会議のようなものになっているためではなかろうか。

 たとえば、ロシア危機とヘッジファンド危機に見舞われた1998年に、当時のグリーンスパンFRB議長がこのカンザスシティ連銀主催のシンポジウムの合間に FRB理事や地区連銀総裁とひそかに接触し、その後の利下げの流れをつくったと言われた。

 現在、FOMCメンバーでは、議長を含むFRB関係者と投票権を持つ地区連銀総裁との間で、意見の対立がある。前回のFOMCの会合では、いわゆる時間軸の明確化に対して、フィッシャー、コチャラコタ、そしてプロッサーの3人の地区連銀総裁が反対票を投じた。

 FOMCのメンバーは、理事会からの7名の理事全員と地区連銀から5名の連銀総裁の12名によって本来は構成されるが、現在の理事会メンバーは、バーナンキFRB議長、イエレンFRB副議長、デュークFRB理事、ラスキンFRB理事、タルーロFRB理事と5名となり2人の理事が欠員状態となっている。そして、地区連銀からはニューヨーク連銀のダドリー総裁とともに、シカゴ連銀のエバンス総裁、フィラデルフィア連銀のプロッサー総裁、ダラス連銀のフィッシャー総裁、ミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁が投票権を持つ。

 FRB理事会のメンバーについては、最終的にはバーナンキ議長の政策を後押しする立場となっているとみられる。ただし、デュークFRB理事は過去に反対票を投じたことがある。また、ニューヨーク連銀のダドリー総裁やシカゴ連銀のエバンス総裁も議長を支持しているようである。それに対し、3人の地区連銀総裁はやや意見を異にするとみられていたが、現実に8月のFOMCでは反対票となって出てきたことになる。

 今回のジャクソンホールでも、この反対派の地区連銀総裁などとバーナンキ議長が接触を持ったのかどうかは憶測の域を出ないものの、その可能性は十分にありうる。たとえば、今回のジャクソンホールで、バーナンキ議長は9月のFOMCの日程を、十分な議論が出来るよう1日ではなく、20日及び21日の2日間のスケジュールとすることを示した。この十分な議論をする相手が、主に反対票を投じた3人の総裁であろうことは容易に想像がつく。そして、追加緩和策についてメンバー全体の意見のすり合わせの時間が必要とされたのではなかろうか。

 バーナンキ議長は8月のFOMCで示したものについて、あくまで経済物価情勢が低レベルで推移する限りの予測として示したことをあらためて説明している。2013年の半ばまで実質的なゼロ金利政策を続けるというのは、コミットメントではなく予測である。しかし、市場ではこれを時間軸の明確化や強化と取り、議長もその市場による判断を意識して打ち出したものであろう。今回の時間軸は約束ではなく、経済物価の動向次第ではその予測を取り下げることが容易なものであるが、それでも3人の地区連銀総裁が反対したという事実はかなり重いものである。

 8月のFOMCでFRBは量から再び金利に視点を移している。これはQE2の反省に基づいたものであることも想像され、追加の国債購入といったQE3の可能性についてはよほどのことがない限り実現性は薄いのではなかろうか。このため、市場に期待感を残した次の一手も、金利、特に時間軸効果を意識したものになる可能性がある。市場ではFRBが保有する国債の残存年数の長期化なども予想されているが、そのあたりに落ち着くのではなかろうか。ただし、それについても3人の地区連銀総裁は反対票を投じてくる可能性はありうる。2日間に延長した9月のFOMCで、どのような議論が交わされるのか興味深い。


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by nihonkokusai | 2011-08-30 10:02 | 日銀 | Comments(0)
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