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ムーディーズの格下げによる日本国債格への影響

 8月24日の8時頃に、米国の大手民間格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、日本政府の自国通貨建て・外貨建て債務格付けをAa2からAa3に一段階引き下げたと発表した。見通しは安定的に変更した。

 ムーディーズは今年の5月31日に、日本政府の自国通貨建てと外貨建ての債務格付「Aa2」を引き下げ方向で見直しの対象にしており、向こう3か月程度をメドに、格下げするかどうか判断するとしていた。

 このときの見直しの背景として、東日本大震災に関連する経済・財政コストが当初の予想をはるかに上回る規模となり、世界的な金融危機が財政と経済に与えたマイナス影響が、より拡大しつつあること。そして、今後も適切な時間軸で財政赤字削減を達成できないのではないかとの懸念。さらに、人口動態上の圧力の高まりや、危機後の不安定かつ不確実なグローバル経済環境において生じ得る新たなショックに対し、長期的財政再建戦略がぜい弱の3点を挙げていた。

 見直しの際から格下げの前提となる背景に変化はなかったことで、ムーディーズは3か月という期限ぎりぎりのところで、格下げを発表したことになる。個人的には民主党代表選の結果をある程度確認してから格下げ発表かと考えていたが、それを待たずに格下げ発表に踏み切ったようである。

 このムーディーズの日本国債の格下げによる債券市場への影響は、これまで通り、ほとんどなかったといえる。市場でこの格下げはかなり事前に予想されていたことに加え、二段階の格下げも警戒する声があったものの、それが一段階に止まった上に、見通しが安定的に変更されたことをむしろ好感する声も上がっていた。

 今回の日本国債の格下げについてムーディーズは、過去5年にわたり首相が頻繁に交代したことが、長期的経済・財政戦略を効果的で一貫した政策として実行に移すうえでの妨げとなってきたこと、地震と津波、その後の福島原発の事故が2009年の世界的景気後退からの回復を遅らせ、デフレを悪化させ、経済成長見通しの弱さが、赤字削減目標の達成と「社会保障と税の一体改革成案」の実施を一層困難にしていることを理由にあげている。

 その首相が頻繁に代わっている最中の2008年6月に、ムーディーズは自国通貨建ての債務格付けをA1からAa3に引き上げ、2009年5月には同格付けをAa3からAa2に引き上げていたのはどうしてであろうか。

 2009年5月の際は自国通貨建て債務格付けをAa3からAa2に引き上げと同時に、日本の外貨建て債務格付けをAaaからAa2に引き下げたことで債務格付けをAa2に統一したためと理由付けられていた。しかし、結果としてはこの際に自国通貨建ての格付けは引き上げられたことは確かである。参考までに現在、外貨建ての日本国債は発行されていないが、外貨建ての日本政府保証債は存在している。

 もし、ムーディーズが1998年の日本国債の引き下げ後、格下げを継続して行なっていたのならば一貫性はあるとみなされようが、途中でこのように引き上げに転じ、その後また引き下げを行なうなど一貫性はみられない。この間、日本政府の債務残高は減ることなく増加し続けているにもかかわらずである。

 そして、今回ムーディーズは見通しを安定的に変更した理由として、弱まりをみせない日本の投資家の国内投資志向と国債選好を背景に、政府は財政赤字を補填する資金を世界で最低水準の名目金利で調達できることを根拠とした。

 これは日本国内の格付け会社が最上位にある日本国債の格付けを維持している大きな理由であると思われる。また、海外格付け会社が日本国債をいくら格下げしても日本国債が売られない理由でもある。

 格付けはあくまで信用度を測る上での、ひとつの民間会社の見方に過ぎない。その信用が揺ぎ無いものであるのならば、S&Pによる米国債の格下げや、今回のムーディーズによる日本国債の格下げに該当国の国債市場が影響を受けることない。しかし、その信用力に対して疑問符がつくとギリシャなどのように格下げが債券価格急落のきっかけともなりうる。その意味でも、今後も日本国債の市場からの信用を維持させることが重要である。


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by nihonkokusai | 2011-08-25 08:34 | 国債 | Comments(0)
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