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FRBによる時間軸強化とはどういうことなのか

 FRBは9日のFOMCにおいて、あらたな政策に乗り出した。FOMCの声明文には以下のような文面がある。

 The Committee currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through mid-2013.

 つまり、現在の経済情勢が続く限りは、少なくとも2013年半ばまで、政策金利であるFF金利を異例な低水準を継続する、つまり事実上のゼロ金利政策を続けることを宣言したのである。前回の文面にあった「for an extended period」が「at least through mid-2013」に変わったことにより、具体的な期間が示され、長期間にわたりゼロ金利政策を続けることを市場に知らしめた。

 日本銀行もこれまで時間軸政策を何度か行なっているが、そもそも時間軸政策とか時間軸効果とは何であろうか。

 中央銀行が操作している、もう少しはっきり言えば中央銀行が動かせる金利は極めて期間の短い金利である。FRBは民間銀行が連邦準備銀行に預けている準備預金であるフェデラル・ファンドの金利を操作目標にし、日銀は無担保コール翌日物の金利を操作目標、つまり政策金利としている。

 それに対し期間が1年を超える長期金利については、市場で形成されることで中央銀行がそれを操作することはできない。大昔のような規制金利の時代ではなく、多種多様の市場参加者がそれぞれの事情や思惑で価格が形成されており、つまり価格の裏返しとなる金利が形成されている。しかし、中央銀行の金融操作は短期金利の誘導目標値を上げ下げすることにより、より長めの金利に働きかけようとしている。その働きかけを強化させるための政策のひとつが、時間軸を設定することである。

 つまり、FRBが長期間に渡ってと曖昧な表現から、具体的な日付を設定することで、これにより2年間ゼロ金利政策が継続されるとの予想が市場に広まれば、2年国債の金利などの低下圧力につながり、それがさらに長い期間の利回り低下を促すことになる。実際に9日に米国の2年債、3年債の利回りが過去最低水準をつけたのはこのためである(3年債入札が順調であったことも多少影響したが)。

 日本では2001年3月からの量的緩和政策の解除のために3つの条件を挙げていた。生鮮食料品を除く消費者物価指数の前年比上昇率が基調的にゼロ%以上になる、消費者物価指数が先行きもマイナスにならない、経済・物価情勢を総合的に判断する条件であるが、「生鮮食料品を除く消費者物価指数の前年比上昇率が基調的にゼロ%以上になる」という具体的な数値目標を入れ、デフレが進行している状況下、プラスになるのはあと何年かかるかわからないように情勢下にあると、これがより長い期間の低下圧力につながり、これが時間軸効果と呼ばれているものである。

 また、昨年10月に日銀は包括緩和政策を実施したが、その際に「中期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していくとし、時間軸を明確化した。これには具体的な数値が表面上入っていないが、中期的な物価安定の理解というのが曲者で、日銀が中長期的にみて物価が安定していると理解する物価上昇率の中心は1%程度となっていたことで、これは2001年3月からの量的緩和政策の解除条件よりもハードルが引き上げられ、時間軸をより強固なものとしたものであり、これは時間軸政策とも表現されている。

 ただし、注意すべきは日米のゼロ金利政策の解除については、ある程度、中央銀行の裁量が働くことも意識しておく必要がある。経済や物価を取り巻く情勢が変化したとみれば、その期間や条件を完全に満たすことを待たず、日銀、FRBともにゼロ金利政策を解除する可能性もありうる。


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by nihonkokusai | 2011-08-10 12:53 | 日銀 | Comments(0)
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