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リスクオフの動きが加速した背景

 米国の債務問題はとりあえず解消したが、米国経済のソフトパッチ(経済成長の一時的な鈍化)が懸念され、さらに欧州ではイタリアやスペインの債務問題が今度は浮上するなどしたことで、リスクオフの局面が続き、リスクが比較的高いとみられる金融資産から比較的リスクの低い資産への移行が続いている。

 4日の欧米市場ではこのリスクオフの動きが加速し、米国株式市場ではダウが512ドル安となり、またS&P総合500種は60ポイントの下げと2009年2月以来で最大の下げとなった。米国債券市場では、2年債利回りが過去最低水準をつけ、米10年債利回りは2.4%近辺に低下。資金を預金にも移す動きが出ていたようである。

 また、欧州では昨日の英国10年債利回りも過去最低を更新し、2.67%近辺に低下した。さらにECBは国債購入を再開したものの、アイルランドとポルトガル以外の国債の購入予定はないとし、イタリアとスペインの10年債利回りは、引き続き6%台で推移していたのに対し、ドイツ連邦債は買われ、10年債利回りは2.3%近辺に低下した。

 外為市場では、リスクオフの動きからスイスフランや円が買い進まれていたが、この対応のため、3日にスイス国立銀行は突然、金融緩和策を発表するなど対策を打ってきた。

 さらに4日に政府・日銀は円買いドル売りの為替介入を行ない、日銀は予定していた金融政策決定会合を午前11時15から前倒しで開催し、それも2日の予定から1日だけに短縮し、資産買入等の基金を40兆円から50兆円と10兆円追加するという追加緩和策を決定した。

 ただし、スイスや日本が自国の通貨高を是正しようとも、今回のリスクオフの原因が、自国の要因によるものではないことで、あくまで一時的にブレーキとして作用する程度にしか過ぎない。

 今回の世界的なリスク回避の動きの背景には、米国経済の鈍化も指摘されている。確かに最近、発表された経済指標には事前予想を下回るものが多いが、それにしては市場の反応があまりに大きすぎる。米国のソフトパッチによる世界経済への懸念は大きな要因であると思うが、市場の不安の根底には、米国をはじめ欧州、さらに日本も加えて、政府そのものへの信用の失墜、さらに財政悪化により有効な対策がとれなくなるという懸念が存在しているのではないかと思われる。

 米国の債務問題はぎりぎりになって解消されたが、市場では政府の動向に翻弄されることにもなり、危機的状況となる一歩手前まで追い込まれ、政府に対する信用を失った可能性がある。政府債務上限引き上げの合意には、歳出削減が盛り込まれ、これが米経済に影響する側面がある。そもそも政府債務上限を引き上げなければならないほど、米国の債務そのものが膨れ上がっているという事実もある。

 欧州についても債務問題がイタリアやスペインまで波及しているものの、なんら有効な手立ては打ち出せずにいる。このまま本当にイタリアまで債務危機が本格化すると、手の施しようがなくなる懸念がある。また、英国も含め、欧州各国が財政再建の動きを強めれば、それは景気に対してマイナスの影響ととらえられよう。

 そして、日本も同様である。政府債務の大きさは言うまでもないが、加えて、赤字国債発行法案は依然として成立の目処はたっていないような状況にある。さらに辞任の可能性を示唆したはずの首相が居座り続け、政権そのものがレームダック状態にある。

 安全資産として円は買われているが、円買いの理由は日本政府を信用しているからではなく、あくまでドルやユーロよりはましであるとの逃避的な買いであろう。

 また、巨額債務を抱えているはずの米国や日本の国債が買い進まれているのは多少、矛盾するところはあるものの、世界的な景気への懸念とともに、あくまで資金の逃避先として買われている面が強いと思われる。

 また、今回の日本の為替介入について、米当局者は米国は支持しなかったと述べ、ECBのトリシェ総裁も日本の介入は、多国間の合意に基づくものではないと述べている。震災後の介入とは異なり、今回の「単独介入」については欧米ではあまり快く思っておらず、このあたり不協和音も見え隠れしている。

 このため、今回のリスクオフの動きに対処するためには、市場に対する日欧米の政府に対する信用そのものを取り戻すことが最優先なのではなかろうか。そうでなければ、小手先の対策はむしろ市場の失望を買うだけということになりかねない。ただし、政府債務の問題の解決は非常に難しい。それだけに、余計に市場が動揺しているともいえるのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2011-08-06 08:57 | 国債 | Comments(0)
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