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あまり効果の期待できない為替介入と追加緩和

 米国の債務問題は期限ぎりぎりになって合意に向かうこととなった。債務上限を少なくとも2.1兆ドル引き上げ、歳出を2.4兆ドル以上削減するという米国債務の合意案が下院を通過し、上院の通過も確実視されており、成立する可能性が強い。

 民主・共和両党指導部による米債務上限引き上げの合意が報じられ、債務問題についての懸念が後退したものの、昨日のニューヨーク外為市場でドル円は一時76円29銭をつけ、震災後の3月17日につけた過去最高値76円25銭に接近した。また、ドルはスイス・フランに対して過去最安値をつけた。

 このドル売りの要因としては、今回の合意案では歳出削減幅が少ないとして格付会社が米国債を格下げする懸念が残ることも指摘されているが、それよりも米国景気に対する懸念の強まりが大きく影響を与えている。ちなみに格下げで本来ならば最も影響を受けるはずの米国債は引き続き堅調となっており、格下げの可能性は仮にあったとしても、それほど懸念する必要はないと思われる。

 1日の米株式市場ではダウ平均は、朝方に140ドル近い上昇となったものの、発表された7月のIMS製造業景況指数が予想を下回り、これを受けてダウ平均は一転して140ドル以上下げる場面もあった。最終的には10ドル安となったが、29日に発表した第2四半期(4-6月期)のGDP速報値は年率換算で前期比プラス1.3%となり事前の予想を下回るなどしたことで、米景気の先行きへの懸念が市場で強まっていることをうかがわせる。

 つまり、今回の円高というよりドル安の背景には、米債務問題によるドル売り圧力が後退しても、歳出削減の影響も加わり、米景気減速によるドル売り圧力が控え、ドル安が継続しているためと思われる。

 2日付けの日経新聞によると、この円高を是正するために政府・日銀は緊急策の検討に入り、政府は介入を準備、日銀は今週開かれる決定会合で追加緩和を検討するそうである。記事によると、米債務問題を巡って日米欧での電話による協議の中で、為替の動きに極めて強い懸念を表明し、日本側から必要に応じて円売り介入を断行する意思を伝えられ、それに対し米当局は円売りドル買いの市場介入を容認する姿勢を示していたそうである。

 変動相場制、つまり為替の居所が市場で決定される中にあり、特に昔に比べ市場規模が非常に大きくなっている外為市場での介入効果は、一時的なものになることは、これまでの介入の例を見ても明らかである。アナウンスメント効果は大きいことで一時的に円高圧力が後退するものの、外部環境に大きな変化がなければ、時間の経過とともに再び円高圧力が強まることになる。

 ただし、今週4、5日にはちょうど金融政策決定会合も開催されることで、政府・日銀が一丸となって対応する姿勢を示せるタイミングでもある。

 しかし、日銀が基金規模の拡大などの追加緩和を行なっても実質的な効果は限られる。こちらもまたアナウンスメント効果を意識したものとならざるを得ない。しかも、このように事前に期待が強まると、相場に織り込まれてしまうことでインパクトは軽減される面もある。

 今回の円高理由が日本に原因があるわけでない点も注意する必要がある。つまり、米国の債務問題であったり、米国の景気動向が背景にある。また、イタリアやスペインの国債利回りが上昇を続けるなどしており、欧州の債務問題が新たなステージに移行する懸念もあるように、ユーロに対しても円は買われやすい状況にある。

 さらに米国のGDPでは米国の景気回復が鈍化していることを示していたが、特に個人消費が低迷しており、これには高い失業率なども影響しているとみられる。その意味では今週5日に発表される雇用統計にも注目が集まる。つまり、5日にもし日銀が追加緩和を行なったとしても、この日の米雇用統計の内容のほうに注目が集まることにより、その効果がそがれる懸念もありうる。

 為替介入も追加緩和もそう何度も切れるカードではない。しかも、実質的な効果は限られ、アナウンスメント効果期待となるとなれば、そのタイミングを計ることが重要である。それには、むしろある程度のサプライズも必要となろう。その意味では今週はカードを温存しておくことも考えておく必要があるかと思う。


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by nihonkokusai | 2011-08-03 08:38 | 国債 | Comments(0)
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