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米債務問題におけるティー・パーティの影響

 米連邦債務の法定上限引き上げをめぐる協議は、いまだに決着をみせず、8月2日の期限が迫りつつある。共和党のベイナー下院議長は財政赤字削減案の改訂版を提示した。

 当初のベイナー案は政府歳出を向こう10年間で最低3兆ドル削る一方、債務上限を最大1兆ドルと1.6兆ドルの2段階で引き上げる内容となっていた。今度の改訂版では、当初の債務上限引き上げ幅を9000億ドルと当初案の1兆ドルから縮小し、向こう10年の歳出削減規模は9170億ドルと当初案の1.2兆ドルから縮小させた。改訂版ではその後さらに1.8兆ドルの歳出削減を検討するとしている。

 一方、民主党のリード上院院内総務の案は、上限引き上げ額を一気に2.7兆ドル引き上げ2012年末までそれ以上の引き上げの必要をなくす代わりに、ほぼ同額の歳出削減を断行するというものであるが、この案についても修正が加えられているようである。

 ベイナー下院議長の当初案に対しては、下院共和党保守派のリーダーのジム・ジョーダン議員が、党内の十分な支持が集まらず成立は困難との見方を明らかにしている。ベイナー下院議長の提案は27日に採決の予定だったが、民主党の反対に加え、ティー・パーティなど身内の抵抗も強いことで28日に延期され、その28日の採決も当初予定していた時間から延期されたようである。

 ジョーダン議員は下院共和党議員240名のうち178人が所属するというグループのリーダーであり、このグループには昨年秋の中間選挙に旋風を巻き起こしたティー・パーティ(茶会)の支援で当選した90人近い新人の多くが参加している。つまり、このティー・パーティの圧力が、党内での不協和音を作り出しているといえる。

 この茶会運動は政治とは関係ないところが発端となった。昨年2月に米CNBCのリポーター、リック・サンテリ氏が、シカゴ・マーカンタイル取引所のフロアからの実況中継中に、「オバマ政権が住宅ローンの救済までするのは間違っている。政府に反対する現代版ティー・パーティを開こうじゃないか」と発言したことに共感が集まり、それがひとつの政治運動化していった。

 ティー・パーティは茶会党とも訳されるが、もちろん党ではない。あくまで小さな政府を志向し、増税に反対を主張する人たちの集まりといえる。しかし、それが昨年秋の中間選挙に大きな影響を与え、ティー・パーティの支援を受けた議員が大量に出現したことで、米国の政治そのものにも影響を与え、今回の債務上限の引き上げ問題に対してもその影響が及んでいる。

 米財務省は8月2日までに債務上限を引き上げなければ以降の借り入れは不可能とし、すべての支払いを履行できるか保証できないと主張している。そうなれば米国債のデフォルト、格下げ、さらに政府の窓口封鎖といった可能性が出てくる。残された時間は少ないが、ティー・パーティの強硬姿勢も影響し、2日までにはなんとかなるとの楽観的な見通しそのものが後退してくる可能性もありうる。


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by nihonkokusai | 2011-07-29 08:30 | 国債
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