米国債のデフォルトの影響を考える
仮に米国債がデフォルトしてしまうと、短期的ながらも世界の金融市場を揺るがす懸念はある。ただし、過去の相場の経験則からみると、事前に予測しうる事態が生じた際には、市場はある程度、心の準備も進んでおり、現実のショックはそれほど大きくはないことが多い。市場を大きく揺るがすようなショックが起きるのは、予想できなかった事態が発生した時である。
しかも、今回もし米国債のデフォルトが発生したとしても、それはギリシャなどで懸念されているデフォルトとはまったく性質が異なるものである。米国の債務問題は、あくまで技術的なものであり、政治的な駆け引きに使われていることが明白で、米国債の信用力が低下し需給そのものへの懸念が出ているわけでも、米国債の利回りが急騰しているわけでもない。
格付会社による格下げが、もし仮にあったとしてもこれも市場への影響は限定的なものとなると予想する。格下げ理由が明白であるだけに、米国債の格下げをもって米国債の信用が失われることは想像しづらい。確かに安全資産として世界各国が保有し、担保として活用されている米国債だけに、格下げによる技術的な影響は一部に出るかもしれない。しかし、デフォルトは起こったとしてもあくまで短期的なものと考えられることもあり、仮に格下げがあったとしても米国債ほど規模も大きな安全資産は他に見当たらないことも確かであり、たとえばドイツ連邦債で肩代わりできるものではないであろう。
規模という面では米国債に引けを取らない日本国債があるが、それでなくても低利回りでもあり、海外投資家から敬遠されている(正確には国内投資家だけで間に合ってしまっている)日本国債を米国債の肩代わりに海外投資家が購入することは考えづらい。ただし、これをきっかけにわずか5%しかない日本国債の海外保有比率が少しでも高まれば良いことではあるが。
このように、米国債のデフォルトが仮に発生してしまったとしても、それによる影響は限定的であると予想する。しかし、そうは言っても市場に余計な不安を与えるようなことは、やはりすべきではないであろう。国債を人質にとり、政争の具にすべきではない。これは何も米国に限ったことではない。いまだに赤字国債発行法案成立の兆しのみえない日本も同様であろう。
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