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ソブリン問題の難しいところ

 7月20日の長野県の講演で、日銀の山口副総裁はソブリン問題について以下のように述べていた。

「ソブリン問題の難しいところは、一度問題が深刻化した国は、そこからなかなか抜け出せない、という点にあります。」

「財政緊縮は景気を落ち込ませ、税収がますます減少します。また、国債価格の下落などにより金融機関に多額の損失が発生すれば、実体経済にも悪影響が及びますし、金融機関の資本を財政資金で補強する必要が出てきます。」

「このように、財政の悪化、景気の落ち込み、金融システムの弱体化、という3つの要素の間には、相互に負の影響を及ぼし合う悪循環が働きやすく、そのことが問題の解決を遅らせます。」

「こうした問題の性格を踏まえますと、欧州のソブリン問題は、長期間にわたって、世界経済の波乱要因であり続ける可能性が高いと考えられます。 」

 20日にギリシャの2年国債の利回りが40%を越えた。ソブリン危機は山口副総裁の指摘するように、いったん始まってしまうと負の連鎖が生じ、底なし沼のような状態になり、問題解決を難しくさせる。特に今回のギリシャ・ショックはまだ進行中ではあるが、良い事例とも言えよう。

 政府の債務問題は慢性的な病気にも例えられるように、その危険性は感じながらも日常生活、政府で言えばその資金調達に支障がなければ、多少の節制など、生活改善は心がけるが、本格治療まで施すことはない。しかし、何がしかのきっかけにより、いきなり債務問題が深刻化することがある。

 政府に対する信用に懸念が生じることで、それは国債利回りの上昇を招くことになるが、その利回り上昇は格付会社の格下げなどにより加速しかねず、国債利回りの上昇が政府の資金調達をさらに困難にさせる。

 金利の上昇そのものが経済を悪化させるとともに、政府の資金調達に支障が出ることでデフォルトのリスクが高まれば緊縮財政とせざるを得なくなり、それも経済に悪影響を与える。

 また、国債を大量に保有する金融機関にも大きな影響を与える。急激な国債の利回り上昇は、裏をかえせば国債価格の急落を意味することで、保有する国債により巨額の損失を被りかねない。金融システムの弱体化がさらに経済に悪影響を与え兼ねない。

 このような負の連鎖が始まってしまうと、止めることは容易でないのは現在の欧州の状況を見れば明白である。米国でも債務問題が浮上しているが、いまのところそれはあくまで政治上の駆け引きに使われているもので技術的な問題にすぎない。しかし、それがデフォルトを引き起こし、米国債が格下げされ、あらためて米国の巨額債務に対しての懸念が生じれば、それをきっかけに負の連鎖が始まらないとも限らない。

 巨額債務を抱え、その債務が増え続けている日本でもいずれ何かしらのきっかけで、政府債務への懸念が表面化する恐れがある。これまでは政府債務が年々増加しようが、格付会社による格下げがあろうが、公債特例法案が成立しまいが、首相が毎年のように変わろうが、それはきっかけにはならなかった。それにより、日本はギリシャなどとは違う。いくら巨額債務を抱えようが、未来永劫、日本の債務問題により国債利回りが急騰することはない、と結論づけることができるであろうか。

 このようなきっかけは事前に予想されないかたちでやってくることが多い。ギリシャの債務問題もしかり。つまり、何がきっかけになるかを事前に予想することはできない。このため、そのきっかけを完全に摘むことは困難である。さらに、いったん負の連鎖が始まってしまうと、それを止めることは非常に難しくなる。このため、それを想定して事前に策を考えていても、現実には一時的な対処療法でしかなくなる。

 もし日本で債務問題が浮上しないようにするためには、健全な財政を目指すしかない。それができないのならば、いずれ深刻な状況に陥る危険性を秘めていると言えよう。


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by nihonkokusai | 2011-07-22 08:48 | 国債 | Comments(0)
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