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債務問題は欧米で過敏な反応、それに対して鈍感な日本

 8月2日が期限となっている米国の債務上限引き上げ問題は、下院共和党が19日に歳出抑制に関する新たな法案を提出し、それがかなり強硬案であったことで、オバマ大統領は拒否権を発動すると発表するなど、与野党の妥協に向けて不透明感が強まった。

 その一方で、デフォルト回避の動きも本格化し、超党派議員6人が出した10年間で債務を約3.7兆ドル削減する計画に対し、オバマ大統領が「政権が取り組んでいるアプローチにおおむね一致している」と支持を表明し、警戒心が和らぐ面もあった。また、両党の議会首脳との協議がホワイトハウスで今週再開される可能性があるなどデフォルトが回避される可能性も出てきている。

 そして、欧州の債務危機問題はすでにギリシャだけでなく、ポルトガルからスペイン、そしてイタリアまで飛び火しており、金融市場に大きな影響を与えている。

 21日に欧州の首脳会談が予定されており、ギリシャに対する第2次支援策について話し合われる。民間投資家が負担をする包括的な解決策が検討されているが、これに対してはECBなどが強硬な反対姿勢を示すなどしており、その支援策の内容も玉虫色のものとなるのではないかとみられている。

 これに対して米国と同様に、今年度予算のための赤字国債が発行できないような状況となっており、さらに債務そのものがイタリアなどに比べ悪化している日本では、国内の債務問題は市場にほとんど影響を与えていない。

 これは日本経済そのものが安定し、さらに政治も非常に安定しており、日本の債務問題を不安視するような環境にはないため、ということでは全くない。むしろ震災や原発問題などもあり今後の経済については不透明感も強く、さらに政治は不安定極まりないような状況にある。

 このような中でも、日本の債務問題が不安材料とならないことがむしろ不思議である。赤字国債発行法案についても、いまだに通過する見通しは立っていない。野田財務相は「早ければ10月中、遅くとも11月中には建設公債を財源とする事業を除く累積の支出額が48.4兆円に到達する見込みだ」との見通しを示し、今国会の会期末(8月31日)までに特例公債法が成立しない事態になれば、9月以降、円滑な予算執行が困難になると訴えた。

 確かにまだ8月末にむけて時間的な余裕があるとみて、市場では材料視していないのかもしれない。もしくは、赤字国債発行法案はぎりぎりでも成立させるであろうと思っているから、無視しているのかもしれない。しかし、米国と日本の状況は似通っている面もあり、その危機意識は共通してしかるべきものであるはずである。

 日本の債務問題については、こんなに巨額であってもこれまでなんとかやってきたので、今後もなんとかなるであろうとの楽観的な見方が広く占めているのもひとつの要因かもしれない。少なくとも国債発行は円滑に行われており、欧州の債務危機により、むしろ安全資産として日本国債は買われ、長期金利も低位安定している。

 日本の債務リスクを意識して、日本国債を売ると今回もオオカミ少年となって損失を被りかねない。日本国債を売るほうが、リスクが高い状況となっていることも確かである。

 しかし、このような状況は果たしていつまで続くのか。本当に市場は日本の債務問題を無視し続けて良いのか。ラインハート氏とロゴフ教授は「現在の低い借り入れコストに安心するのは愚かであり、債務をさらに膨らませても全く問題ないとのシグナルだと解釈するのはもっと愚かなことだ」 、「市場金利は天気のように移ろいやすい。それとは対照的に債務水準はすぐに低下しないものだ」 と述べたそうだが、市場心理も移ろいやすいものである。いずれ日本の債務が市場の標的にされる可能性は十分ありうる。

 現在は日本の債務問題に対して市場は鈍感ではあるが、このような状況はいつまでも続かないであろうことも意識しておく必要があろう。


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by nihonkokusai | 2011-07-21 08:28 | 国債 | Comments(0)
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