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欧州危機のイタリアへの伝播

 7月11日の欧州市場では、欧州の債務危機がイタリアにも波及するのではとの懸念が強まり、イタリアの10年物国債の利回りは5.7%台、スペインの10年国債利回りも6%台に上昇、イタリアの株式市場も急落した。12日にイタリアの10年国債利回りは一時、6%を上回り1997年以来の水準をつけた。

 11日からブリュッセルで欧州首脳の緊急会合が開催されたが、この会合にはトリシェECB総裁や、ユンケル・ユーログループ議長、バローゾ欧州委員長なども出席したが、ギリシャ支援を巡る関係国などとの調整が難航し、債務問題がイタリアなどにも波及するとの思惑も出たようである。12日にイタリアのトレモンティ経済・財務相は、会議を中座して帰国したが、この理由として財政再建計画を仕上げるためと説明した。

 11日から12日にかけてのイタリア国債の利回り上昇を受けて、イタリア上院は14日に政府の財政再建計画を賛成多数で承認し、15日には下院で可決された。財政赤字の削減額は当初の470億ユーロの1.5倍の700億ユーロ強に引き上げる。

 2011年のイタリアの財政赤字はGDP比で3.9%に達する見通しであるが、財政再建計画実行後は2014年にも黒字化する見込みである。野党は当初、緊縮財政が国民生活を圧迫するとして今回の財政再建計画に反対であったが承認が遅れれば、国債への信用が一段と低下しかねないとして。再建計画に賛成する方向で修正した(7月15日付日経新聞より)。

 イタリア国債の利回り上昇により背中を押される格好となり、財政再建計画を推し進めることになったが、それでは何故、急に欧州の債務問題がイタリアにまで波及したのであろうか。

 欧州で債務問題を抱える国として、PIIGSという言葉が使われることがある。これは当初PIGSとして、ポルトガル (Portugal)、イタリア (Italy)、ギリシャ (Greece)、およびスペイン (Spain) を指していた。のちに、これにアイルランド(Ireland)を加えてPIIGSと呼ばれるようになった。

 しかし、2009年末末からはイタリアを除いたポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペインの組み合わせでPIGSと呼ばれるなど、債務問題を抱える南欧諸国にあっては、イタリアは比較的優等生であったはずである。

 ところが、5日に格付会社のムーディーズがポルトガルの格付を投機的等に引き下げたことを受け、ポルトガル国債が急落し、次はスペイン、そしてイタリアかとの連想を招いた。

 また、イタリアでは与野党での債務削減を巡る対立に加え、ベルルスコーニ首相のスキャンダルも与野党での争点となり、財政再建の旗振り役でありトレモンティ経済・財政相と首相との対立も問題を複雑化させた。

 さらにトレモンティ経済・財政相自身も、収賄に関する疑惑が浮上し、それにより市場からの信頼が厚いトレモンティ氏の更迭の噂も流れ、これもイタリア国債急落のひとつの要因とされている。

 市場では11日から12日にかけてのイタリア国債の下落や株の下落は、中国からの売りがあったとの噂もあったようだが、これは確認できていない。ポルトガルの格下げからスペイン、そしてイタリアの債務悪化が意識され、そこにトレモンティ氏の更迭の噂が火をつけた可能性がありそうである。

 トレモンティ氏と首相はその後、和解したと伝えられ、また議会による当初の規模を上回る財政再建計画への承認期待から、6%台に乗せたイタリアの10年債の金利は5%台半ばまでいったん低下した。14日に実施されたイタリアの5年と15年物国債入札は無事消化されたが、まだ不安は燻り続けている。

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by nihonkokusai | 2011-07-16 08:03 | 国債 | Comments(0)
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