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欧州の財政状況を受けての日本への教訓

 一般の方に対して債券や国債に対する認知度を少しでも高めてほしいと思い、このたび本を出すことになりました。7月21日に発売される本のタイトルは、「債券と国債のしくみがわかる本」(技術評論社刊)です。

 ここでは熊課長、牛主任、そして債券部に配属されたばかりの猫さんが登場します。新人の猫さんに債券や国債のことを知ってもらおうと熊さんや牛さんが一生懸命に解説をしています。

 この本のご紹介も兼ねて今回のコラムでは、この3人による会話を聞いてから、解説するというスタイルを取ってみたいと思います。

熊課長「ギリシャからポルトガルと来て、今度はスペイン、イタリアか」
牛主任「それって海外旅行の話ではなくて、欧州の債務問題の再燃の話ですよね」
猫さん「あのう課長、それについてなのですが、欧州の債務が問題にされると何故、日本の国債は買われるのですか」
熊課長「米国やドイツの国債が安全資産として買われるように、日本の国債も安全資産とみなされているからだ」
猫さん「でも、日本の債務残高ってかなり大きいので、心配ではないのですか」
牛主任「日本国債にはしっかり買い手も存在しているし、信認も厚く、いまのところ心配はないが、安心とも言い切れない面もある」
熊課長「これについては、7月12日の日銀の白川総裁が会見で話をしているので、それを見てみるといいぞ」

 ということで、7月12日の金融政策決定会合後の白川総裁の会見から、欧州の財政状況を受けての日本にとっての教訓に関してコメントしている部分を確認してみましょう。

 白川総裁はギリシャの場合について、2009年秋頃までは国債の金利はそれほど上昇していなかったものの、その後の急激に上昇したことについて、「何らかのきっかけで、突然、市場参加者の信認が非連続的に低下する可能性がある」と指摘しています。

 実は日本でも1998年末に同様なことが起きています。これは債券市場関係者以外の人にはあまり知られていませんが、「資金運用部ショック」と呼ばれた急激な長期金利の上昇が発生しました。国債に対する不安が非連続的に増加する可能性は当然ながら日本国債にもありえます。

 さらに白川総裁は、「いったん財政の持続可能性に対する信認が低下し、金融市場が動揺すると、実体経済も下押しされ、財政、金融システム、実体経済の間で負の相乗作用が生じ」その結果、「最終的に必要となる財政の緊縮が、急激で厳しいものになってしまう」という可能性を指摘しています。

 そして、日本の長期国債金利が低位で安定していることの解釈を2つ挙げており、1つ目として「日本の財政バランスは大変厳しい状況にあるわけですが、いずれ必ず財政バランスの改善に向けた取り組みが進められるはずであると市場で受け止められている」との解釈を取り上げています。

 これについては市場関係者が本当にそう思っているのかは疑問です。現在の不安定な政権が財政再建を進められるのか疑問視している参加者も多いはずです。ただし、基本路線としては財政再建は進めざるを得ないというのが共通認識かと思います。

 そしてもうひとつの解釈として、「金利はこれまで安定してきたのだから、これからも安定していると市場が漠然と予想している」という解釈を取り上げています。これは漠然とした解釈ではありますが、この解釈はかなり的を射ていると思われます。この2つの解釈を述べた上で、総裁は次のように語っています。

「前者の場合ですと、わが国として、市場からの信認を裏切らないことが大切ですし、また、後者であれば、そうした漠然とした予想がいつまでも続く保証はありません。いずれにせよ、できるだけ早期に財政健全化への取り組みを実際に開始する、あるいはその道筋を明確に示していく必要があることを示していると思っています。」

猫さん「なるほど、市場参加者は漠然としながらも、財政健全化はいずれ行われると期待し、現在の低金利は続くと考えているのですね」
牛主任「国債価格の急落は避けたいので、そうなっていてほしいという期待感から信認が継続している面もあるのかもしれないが」
熊課長「その期待が何かのきっかけで裏切られるようなことがあれば、ギリシャのような事態は十分に起こりうるということでもある」


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by nihonkokusai | 2011-07-15 10:16 | 国債 | Comments(0)
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