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格付会社に振り回される金融市場

 5日に格付会社ムーディーズは、ポルトガル国債の格付けをBaa1から投機的等級のBa2に4段階引き下げた。格付の見通しはネガティブとした。ムーディーズがユーロ圏加盟国に投資不適格級の格付けを付与するのはギリシャに次いでポルトガルで2か国目となる。

 ムーディーズは、資本市場から資金を調達できるようになる前に、第2次金融支援が必要になるリスクが高まっているとしている。4日にS&Pがギリシャ国債のロールオーバーは、選択的デフォルトの状態とする可能性があるとの見解を示したが、ポルトガルも同様の状況となる可能性があるということか。

 また、ムーディーズは今回の格下げの要因として、ポルトガルが2013年7~12月とそれ以降に資本市場で借り入れを維持可能なコストで実施できなくなる確率が高まっていることや、同国が財政赤字削減の目標を完全には達成できないリスクも根拠としたようである。

 ただし、このような格付会社の格下げにより、格下げされた国債の価格がさらに下落することにより、当事国の資金調達を困難にさせるという悪循環をもたらす懸念も存在する。

 もちろん格付会社による国債の勝手格付も、警鐘を鳴らす上では必要なことかもしれないが、市場の不安心理を増幅させることにより、負の連鎖を加速させてしまうと債務問題の解決をさらに困難にさせかねない。

 ロイターによると、欧州委員会のバローゾ委員長は「前日のある格付け会社による決定は、何かをより明確にするものではなく、むしろ現況に新たな投機的な要素を加えるものでしかなかった」と述べたそうで、ムーディーズによる格下げは金融市場における投機的な動きを助長させているとの見方を示した。

 日本国債については、このような格付会社の格付により市場が動揺するようなことはなく、政府の資金繰りに影響を与えることはこれまでなかった。これは日本国債がその95%を国内資金で賄われていることに加え、日本国債への信任の厚さも影響していると思われる。

 さらに国内の格付会社が日本国債に対して格付を変更してこなかったことも影響している可能性がある。日本の格付会社のひとつR&Iは、2月に日本国債格付け(AAA/格付けの方向性はネガティブ)について、引き下げまでの距離が縮まっているとの認識を示してはいたが、その後、東日本大震災が発生し日本の財政状態はさらに悪化する懸念が強まったものの、現在のところ日本国債の格下げには至っていない。

 この点についても、欧州委員会のバローゾ委員長は、「欧州からの格付け会社が1つもないのは奇妙なことだ。これは、欧州のある特定の問題に対する評価に関して、市場である一定の偏見がある可能性を示している」と述べ、欧州各国が主に米国に本拠を置く格付け会社への依存からの脱却を検討しており、法的な手段を通した是正の可能性を探っていることを明らかにしたそうである(ロイター)。

 日本国債についてはムーディーズやS&Pの認識が正しいのか、それとも国内格付会社の認識が正しいのか。国債価格の推移などを見る限り、格付を変更してこなかった国内格付会社の認識の方が適切であったとと思われるが、日本の債務残高の増加状況をみる限り、海外格付会社の格付がある意味正しかったようにも思える。ただし、債務残高は膨らみ続けていた中で、海外格付会社は途中で格付を引き上げるなど一貫していない面もあった。

 いずれにせよ格付会社の見方は絶対的なものではない。しかし、投資家の債券保有には格付の影響は大きいことで、国債の格下げは問題を複雑化させ、さらに市場を混乱させる要因ともなりうる。大手格付会社の格付変更はあくまで警鐘との意味合いにとどめ、市場の混乱を増強させることがないようにさせることはできないものであろうか。


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by nihonkokusai | 2011-07-07 08:10 | 国債 | Comments(0)
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