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なぜ西村副総裁は独自議案を引っ込めたのか

 6月17日に5月19、20日に開催された金融政策決定会合の議事要旨が発表された。前回4月28日の金融政策決定会合では、西村副総裁より、資産買入等の基金を5兆円程度増額し、45兆円程度とする議案が提出され、反対多数(1対8)で否決されたが、5月の会合では西村副総裁からは同様の議案は出されなかった。その理由をあらためて、議事要旨から探ってみたい。

 これについては議事要旨の「当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」の中で、資産買入等の基金の運営について、ある委員は次のように語っており、これが西村副総裁の発言であることがわかる。

 「前回会合時点では、原子力発電所事故等の展開を背景に将来に対する不安が増大し企業や家計のマインドが更に悪化するリスクが高まっており、基金の増額を図ることが望ましいタイミングだと判断して増額を提案したと述べた。」

 要するに震災と原発事故の影響により、企業や家計のマインドの落ち込みを懸念しての基金増額の提案であったことが、わかるがそれをなぜ5月の会合で引っ込めたのか。それについては議事要旨に下記のようにあった。

 「この委員は、その後、景気の先行きの見方に関する指標やヒアリング情報などにより、懸念していたマインドの更なる悪化の兆候がみられていないことなどを指摘したうえで、追加緩和の必要性は潜在的には大きいものの、現時点で基金の増額を行うメリットは大きくないとの見解を示した。」

 4月28日から5月の会合までに発表された経済指標をみると、例えば、5月12日に発表された4月の景気ウォッチャー調査では景気の現状判断Diが28.3と前月比0.6ポイントの改善となり、2~3カ月先を見る先行き判断DIは38.4と、前月比11.8ポイントと大きく上昇となっていた。また、16日に発表された3月機械受注統計では、船舶・電力を除いた民需の受注額は前月比プラスの2.9%と予想外のプラスとなった。

 しかし、19日に発表された1~3月期実質GDPは前期比マイナス0.9%、年率でマイナス3.7%と事前予想も大きく下回った。4-6月期についても大きく落ち込む可能性があるなど、福島原発の問題も絡んで震災等の影響が長期化し、企業や消費者マインドの悪化を通じて実体経済への悪影響が強まる懸念が、この短い間に後退したとは思えない。

 基金の増額を行うメリットは大きくないとの見解ではあるが、追加緩和の必要性は「潜在的」には大きいというのであれば、前回の信念を貫いて、議事提案を行っても良かったのではなかろうか。

 4月28日の会合では、もう一人、経済物価の見通しを踏まえると追加緩和の必要性は高まっているとの認識を示した委員がいた。この委員も5月の会合で次のように発言していた。

 「別のある委員は、経済物価の見通しを踏まえると追加緩和の必要性は依然として存在しているものの、各緩和措置の効果波及経路と副作用などの検討を続けながら、適切なタイミングを見極めていくことが重要であると述べた。」

 ちなみに野田審議委員は6月16日に任期満了で退任した。野田委員もかつて議長案に反対票を投じたことがある。このような議長の意見とは異なる意見もたいへん重要であることは間違いない。

 4月28日の決定会合で独自議案を出した西村副総裁にはもう少し粘りも見せて欲しかった気もする。また、もう一人の委員も必要性を意識しているのであれば、西村案に賛成するなり、5月の会合で独自議案を出しても良かったのではないか。

 日銀の金融政策決定会合が白川総裁とその素敵な仲間達とならぬよう、そしてスリーピングボード化しないようにするためにも、反対意見を持つのならばそれを票決でも示してほしいと思う。


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by nihonkokusai | 2011-06-20 08:34 | 日銀 | Comments(0)
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