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原発全停止の可能性とその影響

 東京電力の福島第一原子力発電所における事故と、それにより多量の放射性物質が外部に放出されたことにより、原発そのものへの見直し機運が高まっている。原発再開の是非を問うイタリアの国民投票は、投票率が50%を超えて成立し、暫定開票結果では、原発凍結賛成票が約94.5%を占めた。国内世論に関しても今後、脱原発に向けて高まることが予想され、来年春には全ての原発が停止する可能性がある。

 経済産業省所管の日本エネルギー経済研究所によると、すべての原子力発電所が運転停止し、火力発電所で発電を代行した場合、液化天然ガスや石炭など燃料調達費が増えるため、2012年度の毎月の標準家庭の電気料金が平均で1049円上昇するとの試算を発表した(読売新聞)。このように家計にも負担が掛かり個人消費にも影響が及ぶ可能性がある。この1千円のアップを高いと見るか安いとみるか、毎月1千円の節約で原発リスクをおさえられるならばとの見方も出てこよう。

 中部電力は菅首相の要請を受けて、5月14日までに浜岡原子力発電所の全原子炉を停止した。現在の時点で、停止している原発は、福島第一、第二原発や浜岡原発、女川原発、のほか、定期点検中のものを含めると35基となり、営業運転しているのはわずか19基となっている。

 原発は電気事業法により、ほぼ13か月おきに、原発を停止して検査を行うことになっている。通常の場合は、定期検査で停止した原発は地元の了解なしに運転を再開し、1か月程度の調整運転を経て、原子力安全・保安院の最終試験を実施し、営業運転に入ることになる。

 しかし、今後は福島第1原発の事故を受け、地元への理解が必要となろう。枝野官房長官も5月の会見で、定期検査中の原発の運転再開について「各電力会社の緊急安全対策を、国がしっかり確認した上で、地元の意向を踏まえて検討していく」とコメントしている。

 ただし、政府は浜岡原発を停止させたこともあり、原発再開に対して現時点で地元(原発を抱える14道県)の協力を得ることはかなり難しいであろう。今後の大きな余震発生の可能性も指摘される中で、原発再開へのリスクを地元住民もかなり警戒してくることが予想されるためである。

 もし、随時原発が点検に入り、再開ができなくなれば来年には、国内のすべての原発が停止する可能性がある。全国の電力供給の3割を担う原発が止まれば、震災で大きな打撃を受けた日本経済にさらにマイナスの影響を与える可能性があり、生産拠点の海外移転による産業空洞化が加速される懸念もある。

 国内原発がすべて停止されるとなれば、それに向けて電力の供給不足を補う方法とともに、需要を抑える必要性も出てこよう。これまでオイルショックなど大きなショックを乗り越えてきた日本だけに、今回も震災復興とともに新たな電力供給に向けての努力が行われるであろうが、その間、経済は影響を受けることになる。

 オイルショックを乗り越えた日本ではあったが、その影響を受けた税収不足などのため特例法を制定しての赤字国債が発行されるなどしており、政府債務増加のひとつのきっかけともなっている。今回も震災と原発事故の影響で、政府債務がさらに拡大するとみられる。景気へのマイナスの影響は税収不足をもたらすことが予想される上、歳出の増加により、いわゆるワニの口はさらに開くことも想定される。その分、いわゆる臨界点は前倒しされることとなる。だからこそ、原発は再開すべきというわけではない。念の為、それによる影響もある程度、想定しておく必要もあると思うのである。


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by nihonkokusai | 2011-06-14 08:43 | 景気物価動向 | Comments(0)
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