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西村副総裁が独自議案を出した4月28日の決定会合議事要旨より

 5月25日に日銀は、4月28日に開催された金融政策決定会合の議事要旨を発表した。この会合では、西村副総裁が独自議案を出していたが、執行部の一人である副総裁が独自に議案を提出するのは極めて異例でもあった。このため議事要旨から、まずその理由を探ってみたい。これに関しては「先行きの金融政策運営に関する」議論の箇所に次のようにあった。

 「一人の委員が、資資産買入等の基金の増額を行うことが適当であるとの意見を述べた。この委員は、原子力発電所の事故が長期化し、津波の被害や電力供給能力の不足とともに複合的な問題となっていることから、企業や家計のマインドが更に悪化し、実体経済への悪影響が強まるリスクが高まっているため、資産買入等の基金を5兆円程度増額することが適当との意見を述べた。」

 この委員が西村副総裁であることは確かであろう。西村副総裁は福島原発事故の影響を重くみており、これに震災そのものの影響と電力不足の影響が合わさって今後のリスクの高まりから、追加緩和策を提案したものとみられる。続いて議事要旨には次のような記述があった。

 「別のある委員は、経済物価の見通しを踏まえると追加緩和の必要性は高まっているとの認識を示したうえで、現在は、以下の点を更に点検しながら、具体的な措置やタイミングを見極めていくことが重要であると述べた。すなわち、この委員は、検討の視点として、市場規模の制約等を踏まえたリスク性資産の買入余地、全体として効果を発揮している包括緩和における各措置の効果とその波及経路、非伝統的手段の持つ副作用、効果発現ラグを踏まえた効果的な政策実施時期などを指摘した。」

 西村副総裁とともに追加緩和の必要性を問う委員がもう一人いたのである。4月28日の会合後に西村副総裁の議案には賛成する委員が何人か出ていてもおかしくなかったとの話がマーケットでは伝わっていた。実際にこの議事要旨から少なくとも一人はいたことがわかる。ただし、実際の採決において、この委員は西村委員の議案には反対していたのである。

 この別のある委員の発言内容からは、タイミングの見極めが重要との認識が示されており、追加緩和の必要性は高まっているもののこの時点ではそのタイミングではないとの判断が働いたのであろう。

 また、経済情勢に関する議論において、次のようなやり取りも交わされていたことがわかった。

 「ある委員は、ヒアリング情報などを踏まえると、企業と家計のマインドが相乗的に悪化し、それに伴って需要が減退するリスクを感じると述べた。これに対し、何人かの委員は、生産や支出の落ち込みは、前回決定会合でも想定していたものであると指摘した。」

 このある委員が西村副総裁であるのか、それとも追加緩和の必要性を認識していた別のある委員であったのかは定かではないが、景気認識について委員の間で見方が分かれていたことが伺える。

 しかし、このあと5月20日の金融政策決定会合では、西村副総裁は追加緩和に関する議案は提出していない。「企業による生産再開に関するミクロ情報が増えている」との指摘が4月28日の議事要旨にあったが、サプライチェーンについても予想以上に回復しつつあり、「自粛ムードは修正されつつある」などマインドの悪化が加速している様子もないことが、それ以降に明らかになったことで、西村副総裁は5月20日の議案提出は行わなったのではないかと思われる。

 また、4月28日の会合では「中長期的な物価安定の理解」の点検も行われていたが、これについては次のような状況にあった。

 「何人かの委員は1%程度を中心として概ね上下1%の範囲内であるとの見解を示した。別の何人かの委員は1%程度を中心に概ね上下0. 5%の範囲内との認識を示し、このうち複数の委員は、中心は1%より幾分高めであると述べた。一人の委員は、0. 5%~2%で、中心は1%より幾分上の値との見方を示した。」

 昨年4月30日の決定会合の議事要旨を見ると、次のようになっていた。

 「多くの委員は1%程度を中心値として上下0 . 5 %ないし1%の範囲内であるとの見解を示した。一人の委員は、0 .5%~2%で、中心は1%より幾分上の値との見方を示した。一人の委員は、1%よりゼロ%に近いプラスを中心に考えているとした上で、中心値である1%を過度に強調するのは望ましくないのではないかと述べた。」

 昨年と比較すれば、タカ派が一人減り、ハト派が一人から複数に増加していたことがわかる。昨年のタカ派的なコメントは須田委員であったとみられ、その抜けた分の影響は事前に指摘されていたが、中心は1%より幾分上との認識を示すハト派的な委員が増加していた。

 その結果として「中長期的な物価安定の理解」は、昨年の「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1%程度を中心と考えている。」から、「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度である。」 と微妙に(「委員の大勢」の削除)変化していたのである。

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by nihonkokusai | 2011-05-26 09:54 | 国債 | Comments(0)
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