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燻り続ける欧州の債務問題と日本への影響

 5月20日にバイトマン・ドイツ連邦銀行総裁は、ギリシャが債務の償還期限を延長した場合、ギリシャの国債はECBのリファイナンスオペの担保として、不適格になる可能性があると発言した。ちなみに4月末で退任したウェーバー総裁のあとを継いだバイトマン氏は42歳、史上最年少のドイツ連銀総裁となった。

 そして20日に格付会社フィッチはギリシャの格付けをB+に三段階引き下げた。フィッチは欧州連合が検討している自主的な債務再編でも、デフォルトと見なすと表明した。これらを受けて20日のギリシャ10年債の利回りは、16.59%となり過去最高水準に上昇した。

 さらに21日に格付会社S&Pは、イタリアの格付け見通しを、安定的からネガティブに引き下げた。これは政治的な行き詰まりの可能性が財政計画の遅れに繋がり、政府債務削減の可能性が低下との見方によるものである。

 また、22日に行われたスペインの地方選挙では、事前に予想されていたように野党第一党である民衆党が歴史的な勝利を収め、与党社会党は大敗した。これは、政府の財政緊縮策に対する国民の不満などが要因とみられ、今後のスペイン政府による緊縮財政措置の実施に懐疑的な見方も広まった。この選挙を前にスペインでは大規模なデモも発生していた。高い失業率、緊縮財政措置による公務員削減等により国民の不満が鬱積しており、一時のギリシャのデモを思い起こす。

 そしてフィッチは23日に、ベルギーの格付けの見通しをネガティブとし、予算均衡に関して政治的合意が得られず、赤字削減目標が達成できなかった場合には格付けを引き下げると警告した。

 ギリシャの債務問題が、アイルランド、ポルトガルに飛び火し、それがスペインやイタリア、ベルギーまで懸念が広がりつつある。いまのところイタリアやベルギーの財政については、それほど懸念する必要はないと思われるが、今後のユーロ圏での財政問題を見る上で最も影響が大きいとみられるのが、スペインの動向である。経済規模が大きいスペインの債務に対する不安が強まると、欧州諸国に対する信用不安がバージョンアップされる懸念があり注意が必要である。

 今回の欧州債務危機の再燃は、欧州連合がギリシャ問題などに対して抜本的な解決策が見いだせなかった上に、ECBとの意見の相違などが生じたことも挙げられる。さらに、ストロスカーン氏がIMF専務理事を辞任したことで、今後の欧州の債務問題解決に向けて不透明感が強まったことも間接的な要因として挙げられよう。

 ギリシャやスペインなどは債務問題を解決するために、財政再建を積極的に行なっているものの、それに対して国民の理解が得られているとは思えない。今回のスペインの選挙結果を見ても、国民からの不満の声の方が強まっている。

 この欧州の債務問題は対岸の火事ではない。規模としてはこれら欧州諸国をはるかに超える規模の債務を抱えた日本も、いずれ同様の問題が発生する恐れがある。そのための対策として、消費税の引き上げ等も議論はされているが、財政再建に向けた本格的な動きは今のところない。

 日本でも財政再建に向けては、社会保障費の削減などとともに増税などにより、国民にある程度の犠牲を強いることが必要となる。もし半ば強制的に財政再建が進められれば、ギリシャやスペインのようにそれに対する反対運動が活発化する可能性もありうる。

 一部には日本の財政はまったく問題はなく、積極的にもっと国債を発行しデフレ脱却を優先し税収を増加させれば日本経済は回復するという、根拠なき楽観論を唱える人もいる。これまで日本国債が安泰であったのは、それに対する需要が存在していたためであり、その元になっている家計の金融資産は残念ながら無限には存在していない。言うまでもなく、日銀による国債引受などは論外である。

 また、国債を増発させて財政政策を行えば税収増が本当に望めるのか。もちろん一時的な税収増では意味がなく、財政再建を進められるほどの景気の改善とそれによる恒久的な税収増を望める手段があるというのか。

 このような楽観論に惑わされることなく、日本の財政問題に対して真摯に受け止め、半強制的で反感を招くような財政再建ではなく、国民の声に答える格好での財政再建を進めなければ、ギリシャやスペインで起きていることが、いずれ日本でも起きる可能性がありうる。


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by nihonkokusai | 2011-05-25 08:28 | 国債 | Comments(0)
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