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OECDの提言にみる震災の影響を加味した日本の債務問題

 経済協力開発機構(OECD)は4月21日に日本経済の財政状況や経済見通しを分析した2011年版の「対日経済審査報告書」を公表した。これについて消費税20%の引き上げへの提言がマスコミで注目されたが、何故にこの提言が出されたのか、その要因についてOECDの報告書を元に見てみたい。

「OECD対日審査報告書 2011年版」 http://www.oecd.org/dataoecd/6/5/47651437.pdf

 1993年以来、18年連続して財政赤字が続いているが、その要因として、OECDは長期にわたる低い経済成長と減税による歳入抑制をあげている。ただし、並外れた水準の債務による影響は極めて低い長期金利により軽減されているとしている。

 その上で、「しかしながら、日本は、長期金利上昇のリスクを低減させるとともに、持続可能な財政の道筋に戻るための長期にわたるコストを低下させるため、財政健全化に向けた取組みを加速することが必要になるであろう。」としている。

 国債への信認維持のためには、持続可能性(サスティナビリティ)が最も重視される。すでに公的債務残高はグロスで200%(GDP比)、ネットで115%程度と OECD地域の中で最も高くなっている。この数値そのものが日本の財政破綻等を意味するものではないが、債務そのものが巨額となっている点には注意しなければならない。

 このため政府は、2010年6月に財政運営戦略を発表し、この中で国及び地方政府の基礎的財政収支赤字を 2010年度6.4%(GDP比)から 2015年度に3.2%に半減させ、遅くとも2020 年度までに黒字化することを目標とする目標を設定した。このために、国の一般会計歳出(債務償還費と利払費を除く)は、2011年度から 2013年度にかけて、2010年度当初予算の水準を超えないこととされ、この目標は2011年度予算案の中に取り入れられた。

「財政運営戦略」 http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2010/100622_zaiseiunei-kakugikettei.pdf

 しかし、3月11日の東日本大震災の影響による歳出増により、すでにこれは2011年度から守られない可能性が生じている。これほどの未曾有の災害は当然ながら予期できるものではないため致し方のない面はある。ただし、これまでの日本の財政再建への動きは、1997年の金融危機や2008年のリーマン・ショックなどの影響で前進するどころか後退しており、それが政府債務を加速度的に増加させた要因になっている。これは、そもそも財政再建に向けた取り組みが中途半端であり、外的ショックに弱い日本の財務体質にこそ大きな問題があると私は見ている。

 OECDではその被害の規模を考慮する場合、地震と津波による被害を受けた地域における復興に向けた支出について、1995年の阪神・淡路大震災後、国による復興に向けた支出が、GDP比1%以上(6 年間にわたって)に達したことを指摘している。歳出の組み換えや、日本の人々の連帯感に訴えかけ、歳入の短期的な増加により復興に向けた支出を賄うことが重要であるとしながら、中期にわたり財政健全化は優先事項であり続けると指摘しているが、巨額の負債を抱え込んでしまっている以上、それは優先事項というよりも必要不可欠なものとなる。

 そのためには消費税増税を含む歳入改革とともに、大胆な社会福祉改革を中心とした歳出見直しが重要となる。それには国民の理解が必要である。震災復興のための増税ならば理解を求めやすいといったような意識ではなく、もっと長期的なスタンスで債務問題を考えなければいけない。震災復興による歳出増により、さらに日本の財政悪化が加速される恐れがあることで、日本国債が国内資金で賄えなくなるという最悪の状況を回避させるべく、財政再建に向けた具体的なシナリオを構築化する必要がある。それにはこれまで諸外国で行ってきた財政再建もモデルになろう。専門家を交えた具体的な対応策を講じる必要がある。

 ただし、このシナリオには日本国債の信認を揺るがす日銀による国債引受論のようなものは極力排除する必要があるのは言うまでもない。国債への信認が崩れ、長期金利が急上昇してしまえば、改革そのものが極めて困難になりかねない。

 消費税20%が適切であるのかどうかはさておき、これもひとつの提言として受け止める必要がある。これまで財政構造改革に向けて動こうとするたびにブレーキがかかってしまっていたことを踏まえ、具体的・現実的な財政再建策とそれに伴う景気の落ち込みをある程度抑えるような難しい政策について、知恵を出し合うことが重要である。残された時間はそれほど多くはない上に、その時間は今回の震災の影響で多少ながら短くなってしまうことも確かなのである。


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by nihonkokusai | 2011-04-26 08:45 | 国債 | Comments(0)
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