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信用・信認の重要さ

 米国の格付け会社スタンダード・アンド・プアーズは、米国債の格付け見通しを安定的からネガティブに引き下げたが、これによる米債への影響は一時的であり、むしろ欧州の債務問題などが意識されて切り返している。これは米国債への信認そのものが失われなければ、格付けに関する市場への影響は限定的であったためともみられる。

 欧州の債務問題についてはギリシャが債務再編を検討すべきとの意見が出てきており、ギリシャはユーロ圏諸国に対しすべての債務の返済繰り延べを検討するよう要請したとの観測も出て(ギリシャ政府当局者は否定)ギリシャ国債は大きく下落しているが、そもそも、なぜギリシャの債務が問題視されたのか、記憶されているだろうか。

 ギリシャは2009年10月に政権交代が行われたが、パパンドレウ新政権に変わったことにより前政権が行ってきた財政赤字の隠蔽が明らかになった。そして、2010年1月に欧州委員会がギリシャの財政に関して統計上の不備を指摘し、ギリシャの財政状況の悪化が表面化した。ギリシャ危機が生じたのは、その債務そのものの大きさよりも、政府がそれを隠蔽していたことにより政府への信認が失墜したことが大きかったと言える。しかし、市場はギリシャの財政問題をクローズアップしたことにより、同様に債務状態が悪化しているポルトガルやスペインなどにも飛び火したのである。

 たしかにギリシャの政務状態は健全とは言い難い。しかし、ギリシャ・ショックそのものは財政赤字の隠蔽によりギリシャへの信用が低下し、それに格付け会社の格下げが追い打ちをかけた格好であった。

 信用が失われ、同様にショックを引き起こした事例は事欠かない。日本の歴史を辿っても、1927年3月14日に当時の片岡蔵相が「東京渡辺銀行が破綻した」との発言、いや実際には破綻はまぬがれていたことで失言と言えるが、これによりいわゆる金融恐慌が引き起こされた。

 それとこれは小さな事例ではあるが、天皇陛下御在位六十年記念硬貨が発行された際にも、通貨への信用が問題視された。この10万円金貨は発行枚数が1000万枚と巨額であった。また、1枚あたり20グラムの金を使用していたが当時の金価格が2000円前後であり、金そのものの価値は額面の半分以下であり、それが政府への財源を潤した。しかし、その後の偽造事件もあって、金貨保有者は銀行に日銀券と引換に走ったのである。実は私もその一人であった。額面10万円の価値は保証はされていたが、その信用度がやや失われた事例であろう。ただし、ここにきて金価格が4000円台に上昇しており、もしグラム5000円を超えると、今度はプレミアムが付く可能性も出てきた。

 ここで10万円金貨の例を持ってきたのは、これは政府紙幣の発行に近い事例でもあるためである。もし政府紙幣が発行されると、日銀券よりも当然利便性は低下するため、政府紙幣は日銀券に変える動きが強まることが予想される。このため、それよりも政府紙幣を日銀に引受させれば良いとの意見もある。しかし、そもそも財政悪化により発行された政府紙幣に対する信用が維持されることは考えづらい。それを日銀が保有するというだけで、日銀券そのものの信用が失われる。

 腐ったみかんが入っているだけで、すべてのみかんの信用度が落ちる。これは2007年のサブプライムローンを組み込んだ証券化商品が、その後のリーマン・ショックなど世界的な金融危機を招いた発端となったことからも明らかなものである。だからこそ、日銀は保有する資産を国債を中心になるべく安全な資産にしようとしている。確かに一部リスク資産の買入れも行ってはいるが、これは市場における日銀の信用度を低下させるほどのものではなかった。しかし、財政規律を失うことになる政府紙幣、もしくは日銀による国債の直接引き受けは、政府、さらに日銀への市場における信用を低下されることは確かである。その結果がどうなるのかは、ギリシャ国債の例などを出すまでもなく明らかなものであろう。


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by nihonkokusai | 2011-04-19 09:02 | 国債 | Comments(0)
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