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復興国債の日銀引き受けの主張理由がわからない

 19日のこのコラムでは産経新聞の『10兆円規模「復興国債」発行へ 全額日銀が引き受け』との記事に関して取り上げたが、今回の大災害の復興にかこつけての日銀による国債引き受け要請は、今後の日本の将来にも大きな影響を与える可能性があることで、注意して見ておく必要がある。

 今回、復興国債の日銀引受について報道およびツイッターなどでの推進派の状況を見ると、所謂、リフレ派と呼ばれる人たちに多い。ただし、リフレ派と言っても純粋に学術的なアプローチをしている人というよりも、デフレの原因は日銀の金融政策の失敗によるものであり、日銀法を改正し政府関与を強めさせ、さらにインフレターゲットを導入させ、日銀引受の大量の国債を発行した上で、デフレからの脱却をはかることを、今回の危機以前から目指そうとしていた人たちである。

 産経新聞で「復興国債100兆円も可能 日本再生のチャンスに変えよ」との記事を書いた田村秀男編集委員も、同様の発想であろう。また、国民新党の亀井静香代表も震災復興国債を発行し、場合によっては財政法第5条の但し書きで容認されている国債の日銀引き受けも検討すべきだと指摘し、さらに、田中康夫新党日本代表も国会で日銀による国債の引き受けを議決して100兆円規模の復興資金を調達すべきと述べたと伝わっている。民主党にはデフレ脱却議連というのがあるが、その関係者からも同様の発言もあったようである。

 今回の震災による被害が甚大なものであり、当然ながら復興のための財政支出は行われる必要がある。1995年の阪神淡路大震災の際には10兆円近くの被害を受け、3回の補正予算が組まれ、支出総額は3兆2298億円に上っていた。この際に8106億円の震災特例公債も発行された。今回、予想される復興費用はこれを大きく上回るものと予想される。

 このため、補正予算編成に伴っての財源問題が浮上するのは避けられない。これに際して、自民党の谷垣禎一総裁は震災の復旧・復興財源を確保するため臨時増税の時限的な立法措置を講じるよう提案したそうであるが、さすがにこのタイミングでの増税は厳しいのではなかろうか。

 民主党のマニフェストの主要4項目である子ども手当、高校授業料の無償化、農家の戸別所得保障の分を財源に充てる案も出ているが、22日の日経新聞では補正の財源に、基礎年金給付の国負担分の財源不足を一時的に埋めている「霞が関埋蔵金」を転用する案が政府内で浮上した。ただし、これについて野田佳彦財務相は「(補正予算の)規模が定まっていない時に、財源先行ではないと思う」と述べたと伝わっている。

 金額も定まっていないのにも関わらず財源の問題が出るというのも、ある意味、日本の財政状況が懸念されているためでもあろう。このような財源に関する動きは、なるべく国債発行に頼らずに、できるところからまず資金を捻出しようとの意向が働いているためであろう。日本の政府債務は危機的状況にまで膨らんでおり、国債発行を抑制しようとの一連の動きは当然のものである。

 しかし、それでも国債の増発は避けられないであろう。それは市場参加者も当然ながら認識しているが、日本国債が需給悪化観測で売られるような状況にあるわけではない。これは市場参加者の感覚が麻痺しているとかではなく、10兆円規模の国債発行で、すぐに国債需給が悪化するようなことはないとの認識が働いているためである。実際に短期国債などを絡めての増発であれば、国債需給に影響なく増発は可能であるとみられ、日銀の積極的な資金供給などがそれをフォローしてくるであろう。

 このように国債市場が落ち着いている中にあって、何ゆえに日銀引受の国債を発行しなければいけないのか、その理由が全くわからない。想像しうるに、これまで主張してきたリフレ政策をどさくさに紛れて進めてしまおうとの意識が働いていたのではなかろうか。しかも、一部新聞社では復興国債の日銀引受がまるで政府の意向かのように伝えられるという、報道による既成事実化を図ったような行為ははっきり言って言語道断である。

 財政法第五条には「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。」とある。いまさら主張するようなことでもないが、この財政法が生まれた理由をぜひ思い起こしてほしい。

 今回の復興国債の日銀引受を主張している向きは、震災という、この財政法第五条にある「特別の事由がある場合」を殊更強調しているようだが、それはまず復興費用に対して財源がなく、結果として大量国債発行に頼ることとなり、さらに市場はその国債を消化できうる環境にないという「特別の事由がある」ならば、そうせざるを得ないと思う。しかし、震災を特別な事由として、いきなり日銀の国債引受に結びつけて認めろというのは、この財政法の意味をわざと履き違えているとしか思えないのである。


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by nihonkokusai | 2011-03-23 10:03 | 国債 | Comments(1)
Commented by wwwww at 2012-07-02 01:01 x
>このように国債市場が落ち着いている中にあって、何ゆえに日銀引受の国債を発行しなければいけないのか、その理由が全くわからない



そうねぇ。その後、日銀が引き受けなかった代わりに、我々日本国民が25年間にわたって所得税の引き上げでもって、復興増税を引き受ける形になりましたがね。

どっちが日本経済にとってよかったと思いますか?
まさか、所得税を25年間も引き上げられた状態のがよかったとでも?(笑
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