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大きな問題を孕む日銀引受の復興国債10兆円との憶測記事

 18日の産経新聞は、『10兆円規模「復興国債」発行へ 全額日銀が引き受け』、との記事をいかにもスクープのように出してきた。他紙にはそのような記事は見当たらない。しかし、この記事の内容を見ると、『東日本大震災を受け、政府は、復旧・復興のための補正予算編成に向け、主要財源として日銀が全額を直接引き受ける「震災復興国債」を緊急発行する方針を固めた。複数の政府筋が明らかにした。発行額は10兆円を超す見通し。日銀や与党と早急に調整に入り、野党も含めた合意を目指す。』とある(産経新聞)。

 この文書を読む限りにおいて、「複数の政府筋」とあるように、まるで政府の見解のような記事である。しかし、与謝野経済財政相が「日銀が直接国債を引き受けるのは法的に不可能」「資金調達に困難はない、日銀は特別なことする必要ないと断言できる」(ロイター)とコメントしたように、政府にそのような動きは見えない。また、 野田財務相も「日銀の直接引き受けは、慎重な検討が必要だ」とコメントした。

 産経新聞では、この記事を出す前に、「復興国債100兆円も可能 日本再生のチャンスに変えよ」との提言のような記事を田村秀男編集委員が書いていた。当然ながら、この提言と今回の10兆円の復興国債の記事には関連性があるとみられ、複数の政府筋とみられる与党系議員などの提言をあたかも政府の見解として記事に出した可能性があり、そうであれば、これは大きな問題である。

 そもそも、政府は現在、被災者支援や原発での放射能漏れを防ぐことに全力を尽くしており、被害額等の見積もり等はまだ具体的に行われるような状況になく、補正予算についてもその規模を計ることすら難しい状況にあるはずである。

 もちろん、今回の被害が甚大なものであり、当然ながら復興のための財政支出は行われるであろう。1995年の阪神淡路大震災の際には10兆円近くの被害を受け、3回の補正予算が組まれ、支出総額は3兆2298億円に上っていた。この際には、8106億円の震災特例公債も発行された。

 今回の東北関東大震災による被害総額は、阪神淡路大震災を上回る可能性がある。すでに地震や津波そのもので大きな被害が出ている上、福島の原子力発電所の動向次第ではさらに被害が拡大する恐れもある。

 このため、補正予算編成に伴い国債増発についても避けられないとみられるが、通常の特例国債の発行で十分賄われよう。与謝野経済財政相が指摘したように、資金調達に困難はない。むしろそれが困難であったら重大な問題である。

 産経の記事には「新規国債の発行も検討されたが、国債を市場に大量流通させれば財政事情が悪化する上、国債の格付けが下がり長期金利の上昇をもたらす危険性がある。」とあったが、むしろ財政法で禁じられた日銀引き受けでしか国債が発行できない状況であるとなれば、それこそ長期金利の急上昇を招きかねない。日銀による国債引受は財政ファイナンスと捉えられ、その行為そのものが格付け会社による日本国債の格下げをもたらすことも理解できないのであろうか。

 産経の田村編集委員は「政府はこれまで国民の預貯金を100兆円借り上げて米国債を保有している。政府は必要なら、日銀に米国債を担保として差し出せばよい。」とも提言している。政府保有の米国債はFBを発行した上で要するに借金して購入しているものであるが、いくら国民資金から借りているものだからといって、それを担保にしての新たな借金などという発想は、政府に対する信認そのものを失墜させるような行為である。

 産経新聞の今回の記事の背景には、記事の表現を見る限り、複数の政府関係者がいると推測される。このような記事を出すことによって、財政法で禁じられた日銀の国債引受を、危機に乗じて煽り立てようとしたのかもしれないが、それはあまりに危険な行為である。


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by nihonkokusai | 2011-03-19 08:14 | 国債 | Comments(1)
Commented by タダノ at 2011-03-22 14:29 x
産経新聞には本当に困ります。
この新聞、はっきり申し上げてデタラメ記事が普段から多いんですよね。
思想的にもきわめて偏った内容の記事が多いとの印象を持っております。
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