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日本の短期債の海外保有は意外に多い

 昨日のこのコラムにおいて、白井さゆり氏の「日本国債の外貨準備資産としての国際化も真剣に検討していくべきである」との提言を紹介させていただいたが、短期債に目を向けると意外に海外勢による購入額が多くなっている。

 財務省が8日に発表した1月の国際収支統計によると、海外勢による日本の短期債の買越し額が5兆2743億円となり、データが比較可能な2005年1月以降で最大となった(8日の日経新聞サイトより)。ちなみに中長期債については1月は6390億円の買い越しであった。

 地域別の内訳を見ると、短期債に対して中国は1713億円の売り越し、シンガポールも2529億円の売り越し、フランス3006億円の売り越し、アラブ首長国連邦3982億円の売り越しといった売り越しが目立つ中にあり、英国が7兆337億円もの買い越しとなっている。

 この場合の英国とは英国政府などからというよりも、ロンドンの金融機関を通じてほかの国・地域が購入していたのではないかと推測されている。また、2月28日に米財務省は2010年末時点の国別米国債保有高において、中国の保有高を大幅に上方修正したが、これは英国の保有高の一部を中国分として修正されたものである。これもあり、日本の短期債についても、英国経由で中国が購入しているのではないかとの観測もあった。

 英国経由での日本の短期債の購入の要因としては具体的な理由は掴みづらい。このためすべて憶測となってしまうが、たとえば、東南アジア諸国が為替介入を行って得たドル資金を円に変えて短期債に振り向けたとの見方もある。また、欧州諸国の財政悪化などを意識してリスク回避のための買いとか、資源価格の上昇により新興国の利上げなどを警戒して資金を一時的に退避させたのではないかとの見方もある。さらに1月末にかけてはエジプト情勢の悪化もあり、リスク回避を含めて中東産油国が大きく買い越した可能性もある。

 いずれにしても、現在の世界の金融市場にあって日本国債は安全資産として認識され、リスク回避により、資金が流入しやすくなっていることは確かである。外為市場で比較的円相場がしっかりしていることもひとつの要因であろう。外貨準備資産として日本国債もそれなりに意識されていることも考えられる。ただし、あくまで短期債主体であるため、一時的な逃避先と見ておく必要がある。

 ちなみに日銀が発表した2010年7~9月資金循環勘定速報によると、2010年9月末現在の政府短期証券の保有者別集計では151兆5360億円のうち、銀行など民間預金取扱機関が77兆9131億円の51.4%、海外が20兆8414億円の13.8%、中央銀行が21兆1372億円の13.9%、投信など金融仲介機関が7兆6783億円の5.1% 、民間の保険・年金が3兆5788億円の2.4%、その他が20兆3871億円の13.5%で、このうち19兆5810億円が中央政府の保有分であった。

 短期債を除く国債で見ると同時点での海外投資家の保有割合は5.0%しかないが、短期債ではこのように13.8%のシェアとなり、比較的高いものとなっている。短期債については、FRBやECBも超緩和策を継続させていることで、利回りにおいて日米欧でそれほど大きな差はない。このため比較的安全資産と認識されている日本の短期債に資金が向かいやすくなっているのであろう。

 しかし、ここにきてECBやイングランド銀行が利上げを行う可能性が高まってきており、また、FRBも徐々に出口を意識した動きに入る可能性が出てきている。それに対して日銀の利上げについては、「水平線の彼方」にも見えてこないような状況に現在はある。これにより短期債の利回りの差が大きくなると、この流れに変化が起きる可能性がありうる。

 海外投資家による日本の中長期債への購入が手控えられているのは、やはり為替の安定などよりも利回りの差が大きい。このため米国債やドイツ連邦債並に、日本国債の利回りが上昇すれば、海外投資家による中長期債への購入も増加しよう。しかし、日本国債の利回りが上昇すれば、それは利払い負担の増加に繋がり、それは財政をより悪化させてしまう。中長期債の海外保有を増加させるのは、なかなか難しい問題である。

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by nihonkokusai | 2011-03-11 09:21 | 国債 | Comments(0)
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