日本人は財政破綻へと向かうのか
6日の「開戦・リーダーたちの迷走」を見て感じたのは、当時の政治の状況が現在と非常に似通っているという点であった。当時の各組織のリーダーたちは、「戦争に勝ち目がないことを知りつつも、戦争できないと言うことが自らの組織に不利益を与えると考え、言い出すことができない」という状況にあった(NHKの番組サイトより一部引用)。
当時の日本の国策決定の場は、全ての組織の代表者が対等な権限を持つ集団指導体制となっており、全会一致が建前であったため、常に曖昧で玉虫色の決定が繰り返されたという。「日米交渉が暗礁に乗り上げ、妥結の見通しがみえない中、首脳部は、国力判断、すなわち国家の生産力・戦争遂行能力のデータを総動員して、譲歩か、戦争かの合議を行う。結論は、各組織の自壊を招く戦争回避より、3年間の時間を稼ぐことのできる開戦の方に運命を賭ける。」(NHKの番組サイトより一部引用)。
これには軍事力で優っていたロシアを日露戦争で短期決戦で破ったことなども影響していたのかもしれない。しかし、対米戦争はあまりにリスクが大きいことは当時の日本のリーダーたちも良く知っていたようである。ところが、国家の大局的な視野に基づくことなく組織利害の調整に終始したことで、最後まで勇気をもった決断を下すことはなかった。つまり流れに身を任すしかなかったのである。
あの戦争がなぜ起きたのか、それにはいろいろな背景はあろう。しかし、戦争を決断したのは為政者たちである。そしてその最大の犠牲となったのは国民であった。NHKは自戒も込めて当時のマスコミへの批判も行った。マスコミも戦争を煽ったことは間違いないが、やはり為政者による責任は大きかったはずである。
そしてこのNHKスペシャルの内容は、なぜ開戦に向かったのかという理由を探るものではあったが、それを伝えることにより現在の政治状況を痛烈に批判しているようにも感じた。意図していたのかどうかはわからないが、現在の日本を取り巻く情勢への警告でもあると思われた。今回のNHKスペシャルの感想を番組終了後にツイッターで書き込んだところ、同様の印象を持ったとの書き込みが多数寄せられていたことからも、そう感じた人も多かったようである。
つまり「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」というタイトルではなく、「日本人はなぜ財政破綻へと向かったのか」というタイトルに置き換えても良いような内容になっていた。あの時と同様に大きな危機が迫っている。しかし、現政権も債務悪化という危機を目の前にしながらも、国家の大局的な視野に基づくことなく、組織利害の調整に終始している。
国債が国内資金で賄えるのはそろそろ限界に近いことは、現在のリーダー達も良く理解しているはずである。そのことを真剣に国民に問いかけて、財政危機を回避しうる道を早期に模索する必要がある。しかし、財政再建そのものが「自らの組織に不利益を与えると考え、言い出すことができない」状況にある以上、気がついた時には取り返しようのない事態となっている可能性がある。それをNHKスペシャルは示していたのではなかろうか。
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