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中央銀行の金融政策は時代とともに大きく変化



 「金融政策の世界では、1970年代、多くの先進諸国において、マネーストックの一定の伸びをターゲットにした政策運営がなされた。しかしながら、急速な金融イノベーションを受けて、マネーサプライとインフレの関係は不安定になり、最終的には活用されなくなってしまった。1990年代には、インフレーション・ターゲティングが金融政策の新しい枠組みとして登場したが、今回の金融危機に至る過程でバブルが生成されたように、同政策を有効に実施していくことの難しさが浮き彫りになってきた。」

 これは日銀の白川総裁が、フランス銀行の「Financial Stability Review」に寄稿した論文の邦訳の一部である。ここにあるように、マネーサプライとインフレの関係は不安定となった結果、現在、マネーサプライを金融政策を実施する際の指標として利用している中央銀行は少なくなっている。米FRBも2006年3月からマネーサプライ指標でM3の発表を取り止めたことについて、バーナンキ議長は政策立案者にとって有効性が無くなったことが理由だと説明している。

 日銀の金融政策決定会合の議事要旨などを見ても、マネーサプライに関する議論はほとんど見かけなくなっている。また、債券市場でも、昔はマネーサプライ統計(現在はマネー・ストック統計)の発表は、重要な経済指標のひとつとして注目されていた。しかし、現在それをチェックしている市場関係者はほとんどおらず、市場への影響も少ない。

 日銀の政策を批判する際に、デフレの要因としてマネーサプライの伸びが抑制されていたためとの意見も耳にするが、マネーサプライとインフレの関係が不透明になっている状況では、あまり説得力を持たない。

 インフレーション・ターゲティングについても、それを有効に実施していくことは難しく、学者としてインフレ・ターゲティングを推奨していたバーナンキFRB議長もいまだそれを取り入れていない。また、インフレ・ターゲティングを採用している英国のイングランド銀行は、現在の物価高により利上げを余儀なくされるとの見方も強いが、財政緊縮などにより景気の先行きにも不透明であり、ジレンマを抱えている。

 ただし、現在の日銀が行なっている包括緩和策には時間軸政策が取り入れられているなど、日銀でもインフレーション・ターゲティングに近い政策が取られていることも確かである。しかし、これをはっきりとインフレーション・ターゲティング政策としてしまうと自らの政策の自由度を失いかねない。金融政策にはある程度フレキシブルな対応も求められる。その点、現在の金融政策のかたちのほうが対応しやすい面もある。

 さらに日欧米の中央銀行の政策には、国債に関する政策が大きな比重を占めるなど、国の財政面との関わりも強まっている。つまり物価や景気動向、さらに雇用などに加えて、財政問題も金融政策に大きく影響するようになっている。

 今後、日銀を含めて主要な中央銀行の政策がどのように変化してくるのか予想をすることは難しい。中央銀行の金融政策は時代とともに大きく変化している。過去に使われた指標を元にして現在の政策について検証しても、あまり意味はない。日銀批判についてもこのあたりを注意してみておく必要がある。

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by nihonkokusai | 2011-02-22 08:33 | 日銀 | Comments(0)
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