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財政再建に活かすべき戦後の教訓

 大蔵省財務協会から出版されている「高橋是清暗殺後の日本」という本がある。あの戦争(太平洋戦争)が如何なるものであったのかを財政面から見たものである。たいへん読みやすい内容であり、現代史を違った視点で垣間見せてくれる。この本の107ページに戦後のインフレーションに関しての記述がある。

 「公債残高は敗戦時に1408億円、政府保証等の残高は960億円に上がっていた。その一方で、主要都市を焼け野原と化した無差別攻撃で生産設備が壊滅し我が国の生産力は大幅に低下していた。このようにして生じた大幅な需給関係のアンパランスは、当然のこととして激しいハイパー・インフレーションをもたらすことになったのである」

 日本での太平洋戦争での被害総額は653億円との記述もあり、それに比べて政府負債の大きさは約3倍以上もあった。その政府債務はハイパー・インフレにより帳消しとなったのである。つまり国民への被害は直接戦争によるものよりも、政府債務による帳消しのほうが規模は数倍大きかったことになる。

 卸売物価は昭和9年から11年に比べ、昭和24年には220倍にもなり、まさに国債は紙くずと化してしまったのである。これはつまり「国民からの実質的な金融資産の没収であり大増税に他ならなかった」のである。

 日露戦争では、高橋是清日銀副総裁の努力により外貨建て国債の発行で戦費を調達したが、あの戦争では、海外からの資金調達は困難であり、発行される国債は内国債であり資金のほとんどを国内から調達していた。つまり、その95%が国内資金で賄われているという現在置かれている日本国債を取り巻く状況に非常に似ている。

 金融恐慌後のデフレ脱却のためリフレ政策とも呼ばれる政策をとったのが、高橋是清蔵相であったが、デフレ脱却後のインフレを抑制しようとしたところ、軍部により暗殺されている。そしてその後の軍事費拡大、そしてあの戦争へと繋がっていくのである。

 現在の日本の債務状態も戦争直後の状況に類似している。この財政を立て直すためには、当然のことながら痛みを伴う。もちろんそれは国民の痛みである。もし一気に解決を図るのならば、インフレを引き起こす事もひとつの手段であろう。しかし、戦後の悲劇については、我々戦後世代もいろいろなかたちで聞き及んでいる。同じような悲劇は繰り返したくはないはずである。

 もしも現在に高橋是清翁がいたならば、政府にはどのようなアドバイスをしていたであろうか。自ら資金調達に走ったような外貨建て日本国債を提案してくるのであろうか。また、デフレ脱却に用いた巧みな日銀による国債引き受けを企画してくるのであろうか。しかし、その後のインフレ抑制のブレーキをどのようにかけてくるのであろうか。

 日本の現在の債務状況を改善せるためには、高橋是清が働きかけた政策やその後の悲劇などが良い意味でも悪い意味でも大きな事例となりうる。ただし、国民の痛みを最小限度に抑えた上で、国債の信認を維持できるだけの財政再建への働きかけは、早期に手を打つことが重要であることに間違いはない。すでに先送りすればするほど、結果として国民への痛みは増加していくことを認識する必要がある。

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by nihonkokusai | 2011-02-17 08:59 | 国債 | Comments(0)
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