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白川日銀総裁発言への違和感

 7日の日本外国特派員協会における白川日銀総裁の講演内容が日銀のサイトにアップされており、今回はこの内容を見てみたい。

 白川総裁は日本経済の短期的な動向として、最近のデータの動きから、踊り場から脱却する蓋然性が高まってきたとの判断を示した。これは前回の金融政策決定会合での総裁会見でも示している。そして白川総裁は今回の講演で、日本の財政バランスの悪化にもかかわらず、日本国債の金利が低位安定しているのかについて、その理由を述べている。日本の長期金利の低位安定の理由として低成長と低インフレであることに加え、根源的に次のような理由を指摘している。

 「日本は税制や社会保障制度の改革などを通じて、最終的には中長期的な財政健全化に取り組む意思があると投資家が認識しているからではないか」

 これについてはかなり違和感を覚える。市場参加者が現政権に対して、積極的に財政健全化に取り組む意思があると認識しているとは思えない。財政への不安はあるものの、とりあえず国債の需給バランスが崩れない限り、低成長と低インフレで国債を買わざるを得ないというのが、投資家の本音ではなかろうか。財政懸念による国債暴落という狼少年の声に耳を傾けてはいけないというのが、現在のところ日本国債投資に向けた鉄則になっている。

 さらに付け加えて「日本銀行の金融政策運営が、物価安定のもとでの持続的成長の実現という点において軸がしっかりしていることも、重要な要因だと思っています」との総裁発言もあったが、これはやや矛盾しているのではなかろうか。

 長期金利の上昇を日銀が抑えているわけではなく、結果としてデフレ脱却が困難なため、日銀は金融緩和を続けているだけであり、そのため長期金利も上昇していない。本来ならば日銀の金融政策、つまり現状の緩和策が効果を発揮すれば、長期金利は低位安定するのではなく、上昇しなくてはいけないはずである。もちろん日銀の金融政策だけでデフレ脱却が可能なわけではないが。

 総裁は「逆に言うと、そうした信認を大事にし、中長期的な財政健全化に取り組んでいく必要があることを意味しています」とも発言している。「逆に言うと」との表現はいかなるものかと思うものの、国債への信認を維持させることは最重要であることに間違いはない。そして、中期的な財政健全化に取り組むのは政府の仕事であるが、それを推し進めるように働きかけているのは、中央銀行の総裁として適切な発言であると思う。

 また白川総裁は、「やや気懸かりなのは、日本の社会において健全な楽観主義が後退していることです。過度の楽観主義がバブルを生むように、過度の悲観主義は経済の停滞の原因にもなります」との発言があったが、これは私も感じている。特に有識者と言われる人たちに現在の世界的な金融経済情勢について、かなり悲観的な見方をしている人が多い。もちろんそれには理由もあろうが、悪い面ばかり注目してしまうと、その行為そのものが経済低迷の要因ともなりかねないことも確かである。もちろん、理由なき楽観論は慎むべきではあろうが。

 今回の白川総裁の講演についてマスコミなどは、景気が悪化した際に「資産買取の増額なども考え得る」との部分を妙にクローズアップしていた。講演内容全体を見ればわかるが、それはあくまでひとつのリスクシナリオであり、そのことが講演の中心のテーマではない。これも、過度の悲観主義のひとつの現れではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2011-02-09 10:05 | 日銀 | Comments(0)
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