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日銀の議事録に見る議決延期請求権の意味

 日銀は27日に金融政策決定会合議事録等(2000年7月~12月開催分)を発表した。この中で最も関心が高いとみられるのが、最初のゼロ金利政策を解除した2000年8月11日分の議事録であろう。

 ゼロ金利政策の解除そのものも、もちろん大きな注目点ではあろうが、私個人として注目したいのは、政府による議決延期請求権の行使である。それは、日銀法改正にあたってそれを取り入れる参考にしたブンデス・バンクですら行使されなかったものである。

 議決延期請求権とは、日銀法第19条第2項にある「金融調節事項を議事とする会議に出席した財務大臣又はその指名する財務省の職員及び経済財政政策担当大臣又はその指名する内閣府の職員は、当該会議において、金融調節事項に関する議案を提出し、又は当該会議で議事とされた金融調節事項についての委員会の議決を次回の金融調節事項を議事とする会議まで延期することを求めることができる。」というものである。

 そもそも何故このような、ある意味中途半端な権利を加えたのか疑問であった。これは日銀の議決をひっくり返せるものではなく、あくまで議決を遅らせるだけの権利である。これについては、今回の議事録を見ることにより謎は解けた。

 議事録によると、政府はゼロ金利政策解除の議長案が示されたあと、一時休憩を取ることを求めた。約10分間としていた休憩時間は19分となったが、その間、政府関係者が最終判断を求めた相手が宮沢蔵相(当時)であったとみられる。会合が再開され、村田大蔵総括政務次官(当時)が正式に議決延期を請求した。

 このあと請求する理由などにおけるやり取りがあったが、その中で武富委員(当時)が、日銀法改正にあたって、議決延期請求権に関する鳥居委員会(中央銀行研究会)での議論の内容を紹介している。それによると「予期せぬ議案が出てきたときとか、非常に高度に専門的なテーマに関わる議案が出て、政府側において即座に評価しがたい場合は一旦持ち帰る」ことが想定されていたのである。そのあと日銀法改正にも関わった藤原副総裁(当時)も同様のケースを中心に議論していたことを明らかにした。

 そして、雨宮日銀企画室企画第一課長からは、これに関して金融制度調査会答申における該当部分の紹介とともに、国会での審議における政府委員からの説明として、武藤大蔵省総務審議官(当時、のちの日銀副総裁)の答弁を引用した。それには「新たに提案された議題についての政府の見解が必ずしも明らかでないという事態」が生じた際など、政府の中で検討するなど一定期間の検討が必要になるためとあった。

 つまり議決延期請求権とは日銀の議決に対して、それが予期せぬものであったりした際に、政府の見解がはっきりせず、一定期間議決を先延ばしして、あらためて政府の見解を明らかにさせるというものであった。日銀の議決に反対するために設けられたものではなかったのである。

 しかし、この際の政府からの代表者は宮沢蔵相の判断のもと、日銀のゼロ金利政策の解除に反対することで議決延期請求権を行使したのである。

 その後、ITバブルの崩壊などから日銀はゼロ金利政策を飛び越して量的緩和政策に突き進むことになる。日銀法改正後、日銀と政府との対立がはっきりと出たのがこの議決延期請求権の行使であったが、結果から見れば政府の見方が正しかったことになる。しかし、中央銀行の存在と政府との関係を考えれば、当初の意図とは異なるかたちで行われた議決延期請求権の行使は正しいものであったのであろうか。民主党の一部議員による日銀法改正の動きには賛成しがたいものの、もし今後改正が行われることがあれば、日銀法第19条第2項は削除すべきではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2011-01-28 11:01 | 日銀 | Comments(0)
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