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一挙四得の日本のユーロ支援

 昨日、野田財務相は閣議後の記者会見で次のように述べた(財務省サイトより引用)。

「個別国の国債というよりも、アイルランド支援のための資金調達で今月下旬にユーロ圏が共同して大型の起債をする予定でございますので、その部分についてはEFSF債、その信認を高めるためにも主要国の日本が一定割合を購入するという貢献をすることは妥当ではないかと考えています。その方針でございます。」

「大体2割を超える額ぐらいは購入しようかと思っています。」

「外貨準備の中のユーロの流動性の範囲で対応していきたいと思います。」

 以上の野田財務相の発言は、20カ国・地域(G20)関連の円卓会議に出席するため、パリを訪れている玉木林太郎財務官が、「ユーロ圏国債の買い入れは、1つの選択肢となり得る。ただ言明するのは時期尚早だ」と述べたことがきっかけである。

 野田財務相の発言を見る限り、日本政府としてユーロ圏のソブリン危機に対して、具体的な対応策がすでに検討されていたことが伺える。玉木財務官はそれについての直接言明を控え、財務大臣が具体的な説明をしたものと思われる。

 野田財務相の発言からわかるのは、日本政府は個別国の国債を買入れるのではなく、今月末にも起債予定の「EFSF債」の「2割」を買い入れるとするものである。具体的な数値が出たことで、これはある程度決定済みの数値と捉えられる。つまり政府としてはユーロ圏の救済のために何らかの行動を起こすことは事前に決められており、すでに相手先との協議も行われていたものと考えられる。

 ただし、政府の資金を使う以上はリスクを直接負うことは避けたいとみられ、主要格付け会社からトリプルAの格付けを取得しているEFSF債の購入は妥当なところであろう。

 さらに外為市場での混乱を避けるためにも、外貨準備で保有するユーロを使うことも事前に検討されていたとみられる。これは外貨準備の運用先の多様化をアピールできることにもなる。また、金額も第一回の発行の2割程度ならば日本円で1千億円程度とみられるため、外貨準備で保有するユーロで賄えるとしたのであろう。

 ちなみに昨年12月末時点で日本の外貨準備の残高は約1兆962億ドルとなっているが、この統計では、通貨ごとの割合が未公表となっているため、ドル以外のたとえばユーロの比率がどの程度かは明らかにされていない(約2割程度がユーロ建資産との観測あり)。

 すでに世界第一位の外貨準備を持つ中国も積極的にユーロ支援に動いている。最近でもスペイン国債を約60億ユーロ買い増す意向を示しており、これに対抗する意味でも世界第二位の外貨準備を持つ日本も動いたものとみられる。

 ユーロのソブリン危機への支援金額とすれば、1千億円はそれほど大きな金額ではないが、それにより国際貢献にアピールでき、貿易相手としても重要なユーロに貸しもできる。さらに、外貨準備の運用の多様化をアピールできる上に、ユーロ支援をすでに行っている中国にも対抗できると、まさに一挙三得というか一挙四得といったものにもなる。

 現政権の外交としては、久しぶりのヒット作ではないかと個人的に思う。実際に海外市場でもこの日本政府の動きを好感しているようである。今後もこういったかたちでの支援は続けられるであろう。

 また、今回のように日本政府が直接、ユーロ支援に関与することにより、現在のユーロ圏でのソブリン危機に対する具体的な情報も掴みやすくなるのではなかろうか。いずれ日本でも同様の危機が訪れる可能性もあるため、ユーロ圏の危機に対する調査はたいへん重要となる。


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by nihonkokusai | 2011-01-13 08:56 | 国債 | Comments(0)
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