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展望レポートに反対票を投じていた須田委員

 日銀は27日に10月28日と11月4日、5日に開催された金融政策決定会合の記事要旨を公開した。この中で須田審議委員が10月28日の決定会合で展望レポートに関する見通しに反対票を投じていたことが明らかとなった。金融政策そのものに対してではなく、展望レポートの文案決定に反対票を投じるというのは極めて異例なことである。しかし、それにはそれなりの理由があった。その反対理由は議事要旨では以下のように記されていた。

 「須田委員は、展望レポートで示した見通しに比べて、マクロ的な需給バランスの改善が物価上昇率を引き上げる力や包括緩和の効果を控えめに判断し、物価の先行きを慎重にみていることや、消費者物価指数の基準改定などに伴う不確実性に一段と配慮した情報発信が必要と考えていることから反対した」

 ある意味、思い切った反対ではあったと思う。10月5日の包括緩和政策の決定に対しても須田委員は、資産買入等の基金の創設を検討するに際し買入対象資産として、国債を検討対象とすることについて反対している。

 12月1日の講演においても須田審議委員は、「物価見通しについてもっと慎重な見方をしています」と発言しその理由を述べている。

 「私は、デフレが長期化するわが国において、かかる中長期的な予想インフレ率の牽引力を強めることは容易ではないと考えています。」

 「経済の稼働率がまだ低く、今年度後半にマイナス成長が予想されるなど、当分の間、需給ギャップの改善がほとんど見込めない中で、かかる需給ギャップの動きが将来のインフレ率に与える影響は無視できず、中長期の予想インフレ率の牽引力はあまり強くないと考えています。」

 さらに「包括的な金融緩和政策」のすべてに賛成することはできなかったとし、買入対象資産として国債を検討対象とすることについて反対した理由として下記のような発言があった。

 「実際、長めの市場金利の低下は、包括的な金融緩和政策採用以前に、政策金利を0.1%まで引き下げたことや、これまでの対話から生まれている時間軸効果や潤沢な資金供給の姿勢によってかなりの程度実現されているとみています。したがって、長めの市場金利低下を一層促すために国債買入れを増額させても効果は限定的である一方、債券市場の過熱に繋がるリスクや、過度な金利低下が金融機関の収益機会を奪い、かえって金融緩和効果を阻害する惧れがあり、副作用の方が大きいと考えています。」

 「その上、長期国債買入れについては、財政再建への中長期的な道筋が不明確な中、銀行券を上限とする取扱いに例外を設けると、財政ファイナンスに一歩近づいたとの疑念が市場に生じ、かえって長期金利に悪影響が及ぶ可能性があることを懸念したことも反対の理由の一つです。」

 長めの市場金利が包括緩和以降、むしろ上昇気味となっていたことは明らかである。その要因としては須田委員が挙げた債券市場の過熱に繋がるリスクが影響していたことも確かである。さらにこれらの発言からも、包括緩和の効果を控えめに判断していたことも伺える。

 そして、もうひとつの反対理由としている「消費者物価指数の基準改定などに伴う不確実性に一段と配慮した情報発信が必要」との意見は、まったくもってその通りである思われる。2011年度のコアCPIの押し下げ要因ともなりうる基準年の変更については、その影響を織り込まず注記に留めていた。しかし、基準年変更の影響については政策委員の判断に委ねるとしながらも、「思っていたよりも大きかったというようなことが起こる可能性は考慮しておく必要がある」との西村副総裁発の発言が展望レポート発表の前にあったように、これについてはもう少しはっきりとした情報発信が必要であったように思われる。

 今回明らかになった展望レポートへの須田委員の反対は、納得しうる理由が存在する。包括緩和については円高対策を含めてのあくまでアナウンスメント効果が意識されたものと私自身は理解しており、包括緩和の効果を控えめに判断するというのは須田委員ばかりの意見とも思えない。もちろんそれを総裁などが口にすることはできないであろうが。また、消費者物価指数の基準改定などに伴う影響についても、包括緩和では時間軸政策も打ち出している以上はたいへん重要な問題ともなり、しっかりとした説明が必要であったはずである。このわずか1票といえども。その反対票の意味についてしっかりと考えておく必要もありそうである。


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by nihonkokusai | 2010-12-27 15:03 | 日銀 | Comments(0)
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