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「個人向け国債の商品性の見直し」

 12月24日に財務省は個人向け国債の商品性の改善を発表した。

 個人向け国債は長期金利が低位安定していることもあり、その利回りの低さが嫌気されて販売額が低迷している。それに対し利回りの決定方法などを変更するなど商品性を見直すことにより、そのニーズを高めようとするものであるとみられる。

 具体的には10年物の変動金利タイプの金利の決定方法について、これまでの「基準金利マイナス0.8%」から「基準金利×0.66%」に変更される。一見、これでどう変わるのかという声も出そうだが、これは計算してみるとその違いがわかる。

 10年物の変動金利タイプの金利を決めるにはその基準となる市場金利がある。具体的には利子計算期間の開始時の前月に行われた10年固定利付国債の入札における平均落札価格を基に計算される複利利回り(小数点以下第3位を四捨五入し、0.01%刻み)の値である。

 財務省のサイトで発表される10年国債の入札結果を見るとその値が確認できる。たとえば12月1日に実施された10年国債入札の結果から算出された個人向け国債(変動10年)の基準金利は1.19%とある。これから0.8%を差し引いた0.39%が、12月に募集される10年物変動タイプの個人向け国債の適用利率(税引き前)となる。

 これに対して「基準金利×0.66%」とするならば、0.79%(小数点以下第3位を四捨五入?)となり、現行の0.39%に比べてかなり優位となる。

 簡単な計算でわかることだが、基準金利が2.35%を上回ると現行の「基準金利マイナス0.8%」のほうが優位となる。たとえば基準金利が3%のときは、「基準金利×0.66%」は1.98%だが、「基準金利マイナス0.8%」は2.2%となる。

 個人向け国債が2003年3月に発行されてから、長期金利そのものが2.35%を上回ることはなかった。これまでの方式であれば、長期金利が上がれば上がるほど有利なものとの印象があったが、長期金利そのものが低位安定しているとなると、新方式の決定方法のほうが魅力的なものとなる。長期金利の先行きを予想することは難しいが、国債需給に対しての懸念等が出ない限りは、現在の長期金利の低位安定は続くことが予想される。

 そして、10年変動タイプだけでなく、5年物固定金利タイプについても見直される。こちらは発行から2年間は中途換金できないルールを改めて、発行後1年経過すれば換金できるようにする。ちなみに10年物の変動金利タイプ、そして今年7月から発行された3年物固定利付タイプについては、発行から1年経過すれば中途換金が可能となっており、これで3商品ともに中途換金のルールについては統一されることとなる。

 10年物の金利については2011年7月の新規発行分から「基準金利×0.66%」が適用され、5年物の中途換金ルールは2012年4月からすべてに適用される。

 これによる個人向け国債の販売額への影響であるが、これまでに比べて商品性として有利となることは間違いない。しかし、根本的な問題としては、やはり長期金利がある程度上昇しなければ個人向け国債の商品性の優位性はなかなか発揮できないと思われる。

 そして今回の改訂についても、個人に大量の国債を買わせるための財務省の策略かとの意見もあるようだが、残念ながら現在の金利水準では大量に発行することそのものが難しい。

 さらに米国や英国などの個人向け国債の発行の状況などを見ても明らかであるが、あくまで個人向け国債の発行は国債保有者の拡大が狙いであり、個人に国債を押し付けようとしているものではない。


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by nihonkokusai | 2010-12-25 08:47 | 国債
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