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「白川総裁による長期金利に関する発言」

11月30日の白川日銀総裁の講演後の記者会見において、長期金利に関する記者の質問があった。これに対して白川総裁は下記のように述べている。

「まず、米国の長期金利が足もと上昇している背景ですが、今年の夏場にかけて、米国経済の先行きについてかなり悲観的な見通しが広がり、そのもとで米国の金融緩和政策の強化という予想から、長期金利が低下しました。その時と比べると、米国経済に対する過度の悲観は幾分和らいでいる感じがします。それから、米国の追加緩和策が実際に決まり、これが実行に移されたということで、とりあえず長期金利が戻っているという面もあると思います。」

噂で買って事実で売るという相場格言にあるような動きとともに、市場参加者の米経済に対してのセンチメントの変化を理由としている。このあたりは頷けるものがある。

「日本の包括的な金融緩和政策との関係ですが、これはまさに包括という言葉で示しているとおり、全体として、パッケージとして理解して頂きたいと考えています。日本の長期金利は、米国の長期金利の動き等を反映して幾分上昇しているということだと思います。ただ、全体としてみた場合、まず銀行間の資金市場をみると、もともと極めて低い水準にあったTIBORや円LIBORなどのいわゆるターム物金利は幾分ながらさらに低下していますし、社債金利の対国債スプレッドも縮小しています。このように、長めの金利の引き下げ効果やスプレッドの縮小効果があらわれているほか、REITの価格も上昇しています。これらの動きは、民間経済主体の資金調達コスト全体の低下というルートを通じて、金融緩和効果を発揮していくと考えています。」

日本の長期金利の上昇理由を説明しているというよりも、包括緩和政策の効果についてあらためて説明しているようである。日銀が市場に介入することで、市場規模が限られる社債やREITが先回りして買われるのはある意味必然であろう。

「加えて申し上げますと、日本銀行は、時間軸政策を明確化しました。中長期的な物価安定の理解に基づき、物価の安定が展望できるまで実質的なゼロ金利政策を継続することを明らかにしています。講演の席でも申し上げたように、こうした政策は、この先、景気回復が進む局面において、長期金利を安定化させるという効果を期待できるということです。従って、足もとの長期金利は幾分上がっていますが、その部分だけではなくて、全体としてこの政策の効果を捉えて頂きたいと思っています。」

包括緩和のひとつの柱である時間軸政策であるが、今回はそれが打ち出されてからむしろ長期金利は上昇するという結果になっている。日銀による強力な時間軸効果は、過去にはいったん相場の急騰を招くこともあったが、その後の急反落の要因ともなっている。時間軸効果は長期金利をある程度のレベルで抑えつける要因ではあると思われるが、それを安定化させる要因となっているのかはやや疑問である。

さらに記者からは下記のような質問も出た。

「この2年債の利回りは、日銀がやや長めの金利を低めに誘導するという政策目的の対象になっている金利だと思います。先ほどはもう少し長めの金利についてコメントをされていましたが、こうした2年債金利の上昇は、あまり問題視されていないという理解で良いのでしょうか。」

これに対して白川総裁は下記のように返答している。

「金融市場は非常にグローバル化していますから、各国の国債の金利はグローバルな動きの中で変動しているという側面があります。これはFRBについてもそうですが、実際に国債の買入れを行った後は、金利が上昇しています。もっとも、だからと言って国債買入れの効果はないということではありません。やはり国債の買入れ自体は金利の低下要因になっていると思います。日本銀行の国債買入れも、長めの金利に働きかける中で、相応の影響を及ぼしていると思っています。」

過去の日銀の国債買入の効果のほどを詳細にチェックはしていないが、日銀による国債の買入は金利の低下要因というよりも、あくまで金利の上昇抑制要因として働いているように思われる。特に日本では毎年度、新規財源債が大量に発行されており、その消化先のひとつが日銀という構図になっている。これまでの日銀による国債買入が長期金利の低下を招くまでの状況には成り難いものの、国債需給に対してそれなりの影響があったことは確かである。

それよりも質問内容が2年債利回り上昇に関するものであったが、その部分についての明確な答えにはなっていないように思われる。特に短期市場参加者からは、レポのCGレートの上昇などが今回の中期債利回りの上昇要因との指摘もあった。ここにきて、日銀はさすがに積極的な資金供給を行ない、日銀の当座預金残高も20兆円超となったようであるが、こと2年債利回りの上昇については日銀の資金調節による影響も大きかったようにも思われる。

また、今後の日銀の追加緩和期待の後退も2年債利回りの上昇要因とみられるが、日銀が包括緩和で別枠で期間1~2年の国債を買うことを決定し、さらに強力な時間軸政策をとって長めの金利に働きかけようとし、利回り低下を促進させようとしていた2年債あたりまでの金利がそれ以降、上昇してしまったというのはなんとも皮肉な結果ではあった。
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by nihonkokusai | 2010-12-02 14:33 | 日銀 | Comments(0)
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