「日銀総裁の言うところの長めの金利の期間とは」
「FRBのバーナンキ議長は、先日決定した大規模な国債買入れによる追加金融緩和策について、これを量的緩和と呼ぶことは不適切であると言ったうえで、その狙いは、長めの金利を引き下げることにより緩和的な金融環境を実現することであると説明しています。」
FOMCの議事要旨における「longer-term interest rates」とは文面からみて、「長期金利」を指していると思われるが、白川総裁は「長めの金利」との表現を使っている。
日銀の「長めの金利」とはこれまでは通常、ターム物(期日物)金利のことを指していたはずである。ターム物金利とは、取引期間が2営業日から1年程度の期間の金利である。
しかし、10月5日に決定した包括緩和政策における国債買入れについて、白川総裁は次のようにも発言している。
「今回の資産買入等の基金による長期国債の買入れについては、これは短期金利の追加的な引き下げ余地が限られているという現在の情勢を踏まえて、長めの市場金利の低下を促すことを目的として実施するものです。」
日銀が基金で購入する国債は期間1~2年物の国債であり、債券市場では中短期債に属する範疇であるが、短期債に対して長期債という表現もできるため、長期国債との表現もおかしくはない。しかし、その表現にはやや違和感も覚えた。それはこの国債買入の目的を「長めの市場金利」の低下を促すとの表現にかかっていたこともあった。
つまり、包括緩和で日銀の使った「長めの金利」との表現は、ターム物金利ではなく、2年あたりまでの金利を指していたとみられる。
さらにFRBの使った「longer-term interest rates」を長期金利とせずに、白川総裁は「長めの金利」との表現を使ったことにより、それが期間10年の、本来の意味での長期金利を指していたとみられる。長めという期間がいつの間にか延長されていた。
もちろん「長めの金利」なのだから、ターム物とか2年物とか10年物にこだわる必要はないのではと言われるかもしれない。しかし、市場参加者にとり日銀が言うところの「長めの金利」が具体的にどの期間の金利を指しているのかを探ることは重要である。
今後、日銀は「長めの金利」については具体的な期間を想定させず曖昧にさせて、その時々に応じてターム物を意識させたり、長期金利を意識させてくる可能性もありうる。そのため、市場は時々の情勢に応じてその期間を推測する必要があるかもしれない。ただし、できれば具体的な「長め」という期間を示してくれたほうがわかりやすく、さらに市場への働きかけもしやすいと思うのだが