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「白川総裁による日本型デフレの解説」

11月23日に香港での白川日銀総裁の講演内容が日銀のサイトにアップされた。この中で、白川総裁は「日本型デフレ」について解説を行っている。

白川総裁は、グーグルで「日本型デフレ」をキーワードに検索すると、本年7月以降11 月半ばまでのヒット件数は約100万件と、年前半の約40万件から急増している点を指摘していた。もちろんこの検索は日本語ではなく英語の「Japanese-style deflation」で行ったものであろうが、どうやら日銀はインターネットを使ってワード検索もデータ収集の一環として行っているようである。

この講演の中で、白川総裁は日本の経験やその教訓を誤って解釈しているのではないかと指摘している。総裁の理解するところとして、日本の成長率の低下の要因として以下の3つをあげている。

第1の理由がバブル崩壊の直接的な影響であり、過剰な設備、雇用、債務という3つの過剰の解消が必要であったこと。

第2の理由として、1980年代後半から1990年代にかけて世界規模で起こった規制緩和、グローバリゼーション、情報通信技術革命といった大きな潮流の変化に対して、日本企業がうまく適合できなかった点を指摘している。日本の企業は、過去の成功の記憶に囚われ、グローバル経済に生じた大きな変化への対応が遅れたとしている。

第3の理由として高齢化や人口減少の影響をあげている。

第1の理由と第3の理由は、よく指摘される点ではあるが、第2の理由による影響に関しては今後のデフレ解消に向けて新たな視点を与えることになるのではなかろうか。

そして、デフレの問題には賃金による影響も大きいことをあげている。物価上昇率が低下するにつれ、賃金がより伸縮的に設定されるようになり、名目賃金の伸縮的な調整はサービス価格の下落という形でデフレの原因になったとしている。

現在の米国経済について、この日本の教訓がどう生かせるかについても言及している。総裁は米国でのバランスシートの修復はまだ時間が掛かるとしているが、その間に経済の供給面の重要性への配慮が必要であるとしている。

需要の急激な落ち込みを防ぐ上での緩和的な金融政策は重要であるが、低金利の持続は新陳代謝を不活発化することによって、生産性の上昇を阻害する可能性も指摘している。

米国は日本よりも経済構造が柔軟であること、また、人口増加率が+1%程度と日本のバブル崩壊後に比べて高いことは、強みとして指摘できるとしているが、このあたりの日本の状況との違いは認識しておく必要がある。

ただし、バブル崩壊後の長引く経済低迷の中では、社会の不満が高まる結果、長い目でみて効率性に悪影響を与える政策が採られがちであることを指摘している。

 これは現政権を含めて、バブル崩壊後にとられた日本政府による対策を意識しての発言であるかのように思われる。また、その政府の対策に呼応して実施してきた日銀の金融政策を含めての発言であるのであろうか。そして、日本の経験をミスリードしているというのはこの点も含めてのものなのであろうか。

総裁は潜在成長率の低下傾向に歯止めをかけることは、「どの国にとっても決して容易なことではありませんが、それに成功するかどうかが失われた10年と呼ばれる事態を避ける大きな鍵を握っているように思います」としている。

さらにバブル発生の要因のひとつとして、長期にわたって継続した金融緩和もあげていた。その理由として、低いインフレ率が続き、経常収支の黒字の圧縮に向けて強い対外的な圧力を受け、経常収支の黒字を圧縮するためには内需の拡大が必要であり、そのために、緩和的な金融政策が必要という議論が強力に展開されたことや、為替レートが円高に向かうことへの懸念、を指摘している。

このため、金融政策運営は、物価安定の下での持続的な経済成長を実現するという国内経済の安定を目的に運営する必要があるとして、為替レートや経常収支を金融政策の目的とすると、国内経済の安定が損なわれうる可能性を指摘している。

これは過去の日本の金融政策の反省を踏まえた発言であろう。それでも、もし日銀が過去に戻れたとして、あらたに金融政策をやり直せるとしたならば、具体的に何をしたのであろうか。そのあたりについても聞きたいところではある。
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by nihonkokusai | 2010-11-26 10:33 | 日銀 | Comments(0)
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