牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

「白川日銀総裁会見より、アプリオリとは何?」

日銀は11月4日~5日にかけて金融政策決定会合を開催した。当初予定されていたのは11月15日~16日であったが、ETFとREITの買入れを早期に実施できるよう基本要領の審議・決定等を行うためとの理由で日程を前倒しした。しかし、この日程前倒しは11月2日から3日にかけて開かれるFOMCを意識したものであろう。

11月5日の白川日銀総裁の記者会見の内容が、日銀のサイトにアップされたことでその内容を確認してみたい。

FRBが決定した追加の量的緩和に対して、日銀が包括緩和で決定した資産買取規模が小さいのではないか、との記者からの質問に対し、白川総裁は以下のような計算結果を示している。

「今回のFRBの買入れ国債の中心、これは期間5~6年ですが、リスク量を計算してみると、例えば ETF、J-REITは、米国の5年国債の約13倍に相当するという計算になります。」

「日本銀行が行っている長期国債の買入れは、現在、期間を特定せずに年間21.6兆円のペースで行っており、これはGDPの4%強に相当します。今回、FOMCが決定した来年第2四半期末までの買入金額は、同じくGDP対比4%です。」

ある程度、記者からの質問を想定してこれら数値を準備していたと思われるが、総裁は「日米が競争しているというご質問ですが、これも全くそのようなことはありません。」と言いながらも、比較数字を示したあたり、まったく意識していないわけではなさそうである。

ただし、買入資産の中身や規模がどうあれ、それがどのように具体的に実態経済物価動向に波及しうるのかという点については、米国同様に日銀もはっきりと示しているわけではない。

「金利の押下げを通じて緩和的な金融環境を実現し、景気の刺激効果をもたらす」とのFRBの幹部の発言を通じて、買入れの狙いについて白川総裁は言及しているが、日本の前回の量的緩和でそれがはっきりと示されていたとは思えない。

例えば、日銀による「量的緩和政策の効果:実証研究のサーベイ」を見ても、「量的緩和政策が、様々な波及チャネルを通じて、総じて緩和的な金融環境を作り出し、企業の回復をサポートしたとの見方が多い」との結論は出されているものの、波及チャネルは特定されていないとの表現もある。さらに肝心の物価への直接的な押し上げ効果は限定的との結果が多かったとも記されている。

そして、白川総裁は今回の会見で以下のようにも発言している。

「仮に、将来基金の規模を増額する場合にプロラタで増やすのか、というご質問ですが、現在はまだ買入れが始まっていない状況です。今後、買入れを行っていく中で、各資産についてどのような効果と副作用が生じているかを点検します。アプリオリに、先験的に、プロラタで買うということではなく、それぞれの効果と副作用を点検した上で決めていきます。」

つまり今後の基金増額は、プロラタ、つまり今回同様の割合を意識して増額するのではなく、アプリオリ、つまりある種自明的なものを直感を通じて(?)決めていくというものなのであろうか。これについては用語解説を含めての補足追加説明をしてほしい気もする。

これに関して、ある方から福井前日銀総裁も依然に同じ用語を使っているとの指摘を受けた。「繰り返し申し上げるが、緩和とか引き締めというのは、アプリオリに、事前的な定義を数字で言えるものではない。ご承知の通り、一定の金利水準なら必ず引き締め、一定の金利水準なら緩和ということはあり得ない」と2005年2月17日に福井前総裁も使っていた。また、5年前には谷垣財務大臣(当時)も使っていたようである。まさに哲学的表現方法。
[PR]
by nihonkokusai | 2010-11-10 08:31 | 日銀 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー