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「FEDの神格化の崩壊の恐れと日銀の後ろ向きな予防線の危険性」

今回、FRBは明らかに大きなミスを犯した可能性がある。本来であれば市場参加者は中央銀行の動きを逐一追って、金融政策の行方についてコンセンサスを形成させる。このためにFEDウォッチャーや日銀ウォッチャーと呼ばれる人たちが存在する。そのコンセンサスの形成にあたっては、金融政策に関わる人物の発言などが重視されることは言うまでもない。つまり、その市場のコンセンサスをうまく誘導させることで市場に金融政策の影響を織り込ませ、それによる効果をもたらそうとする。

ただし、これにはかなり市場動向にも精通していることも必要となる。そうでなければ、市場のコンセンサスをうまく誘導するどころか、思わぬ方向に導いてしまうことにもなりかねない。今回のQE2と呼ばれる追加緩和観測については、FRBはこの誘導を明らかに間違えている。

12日に発表されたFOMCの議事要旨で、追加緩和の具体策として主に長期国債の追加購入と、インフレ期待に影響を与えうる施策が議論されていたことを明らかにした。バーナンキ議長は15日の講演で、FOMCの声明文にある超低金利政策を、長期間に渡って続けるとの文面を市場の期待以上に強化する考えを示した。加えて16日にはシカゴ連銀のエバンス総裁は、「FRBはインフレが目標を上回るのを当面大目に見ることで、低すぎる水準のインフレを容認できる水準に戻すことが可能になろう」と述べた。

足元のディスインフレがデフレに転じる前に、多少のインフレ覚悟で、積極的な追加緩和を行う姿勢を見せたわけだが、これを市場ではむしろ将来のインフレへの懸念と受け止めていった。FRB関係者からの発言内容がまちまちとなっていたことで、それがむしろ不透明感を強める結果となり、期待よりも不安を強めることとなった。

米10年債利回りは8日の2.33%を底に次第に上昇に転じ、27日には2.7%台をつけてきた。25日に実施された米5年物インフレ連動債入札において落札利回りが初のマイナスになったことが、インフレ懸念の強まりを示す象徴的な出来事となった。

さすがにここまで債券市場が不安定となったことで、FRBが国債購入規模予想で政府証券公認ディーラーに今後6か月間の資産購入規模の予想やその利回りへの影響について調査を行うという異例の事態に発展したのである。つまりこれは、FRBは市場を誘導するどころか、自らの金融政策の影響そのものの自信を喪失させたことの現れとも言える。このようなことはFRB議長が神格化されるほどの米国では考えられない異常事態と言える。

この動きを見る限り、11月2日から3日のFOMCでは国債の買入れは小出し作戦になるとみられ、物価水準目標などが同時に打ち出される可能性は大きく後退したと思われる。そして、FRBの威厳そのものも後退してしまう可能性がある。

そして、日銀はこのFOMCの結果による相場変動に備える意味からか、次回の金融政策決定会合を予定されていた11月15日から16日から11月4日から5日に前倒しすることを発表した。この理由として日銀はETFとREITの買入れを早期に実施できるよう基本要領の審議・決定等を行うためとしている。しかし、日銀の最高意思決定会議、つまりは日本で最も注目される重要会議のひとつである決定会合の日程を早める理由にしてはあまりに軽すぎる。特にここにきて株式市場や不動産市場が危険な動きを見せているわけでもない。しかも結果からすれば前倒しの日程はわずかに一週間後に迫る。それほどの緊急性を持った変更なのである。

この日程変更はどう考えても、FOMCを睨んでのものであろう。前回の8月10日のFOMCでのMBSの償還資金による国債への再投資という実質的な量的緩和策の導入を行ったが、当日の日銀の決定会合ではある程度FRBの動向は読めていたはずながら、この影響を読み間違えたのかこのタイミングで何もせず、それが円高を招いたとの批判を受けた。このトラウマも残ってか、今回はFOMCの動向を見てすぐのタイミングでの日程に、なぜか今になって変更したものと思われる。

市場が不安定になっていればこそ、ある意味、日銀は予防線を張ったとも思われるが、実はこれはこれで日銀にとっても正念場となる可能性がある。日銀はこれまでも政治家やマスコミなどからの批判も受けやすくなっていた。8月の汚名挽回とばかりに、10月5日には市場でもサプライズとなる包括緩和を実施した。これでやっと市場やFRBに対しても先手を取ったということともなろうか。この日銀の包括緩和が少なからずFRBの動向に影響を与えた可能性もある。通貨安競争のためにも、よりインパクトのあるQE2をと市場心理を顧みずにFRBが突き進んだ反動が今回出た可能性もある。

今回のFOMCは、史上稀に見る市場との心理戦になる可能性があり、今後のデフレ圧力も意識しながらもFRBは慎重に政策決定を行うであろう。それに対して市場がどのように反応するか、現時点での予測も難しい。つまり日銀は市場動向を読みながらという意味では、かなり不安定な状況下で決断を下す必要があり、FRBと同様に読み間違いをする懸念もありうる。たとえばもしFRBに追随して安易に追加緩和を行ってしまうと、それがまたFRBに跳ね返り、インフレ懸念を再燃させてしまう危険性もある。今回はかなり慎重に事を運ぶ必要がありそうである。
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by nihonkokusai | 2010-10-28 17:54 | 日銀 | Comments(0)
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