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「中国による短期債大量売却の影響」

10月8日に財務省が発表した8月の国際収支統計によると、「本邦債券に対する対内証券投資(地域別内訳)」において、中国が8月に短期債を差引で2兆285億円売却していたことが明らかになった。中長期債については差引で103億円購入となっていた。今年の1月から7月にかけての累計買越額は2兆3157億円となっており、そのほとんどを8月単月で売却していたことになる。

外貨準備を管理する中国の国家外貨管理局は運用方針について「ドル、ユーロ、円など主要通貨のほか新興国の通貨で構成する」とし、2008年のリーマン・ショックをきっかけにドルに偏った外貨準備の運用を多様化する方針を表明し、それが結果としてユーロの比率を高めることとなった。しかし、ギリシャの財政問題により今年に入りユーロが下落したことで、外貨準備の増加分をユーロからドル、そして円に振り向けたことで、中国による日本国債購入の増加につながったとみられる。

ところが6月7日の1.1877ドルを目先の底に、ユーロドルが回復基調となったことから、円に振り向けていた資金を再びユーロなどに振り向けた可能性がある。つまり一時的にユーロから円に逃避していただけとも言える。また、円高が急激に進行していたことでそれに乗った上で、タイミングを計り利益確定売りが入った可能性もある。

尖閣列島問題などによる日中関係のこじれから政治的な背景があったのではとの憶測も出そうだが、そもそも尖閣列島での中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突したのは9月7日である。さらに何らかの政治目的で国債を売り買いするならば短期債では長期債に比べてあまりに影響が小さい。今回は政治的な意味での売却とは考えにくい。

今回の中国による日本国債のポジション調整を見る限り、安定した日本国債への海外投資家の参入として中国を捉えるべきではないと思われる。しかし、今後も為替動向によっては再び日本国債への資金シフトが起きることも考えられる。その際も当面は短期債主体となり、今後の政治的配慮を含めての長期債投資は控えられる可能性はある。ただし、方針がいきなり変わる可能性もないとは言えず、今後の日本国債の需給に少なからず中国が影響してくることも想定しておく必要はある。

今後、日本国債への海外投資家による保有増は、保有層の裾野を広げる意味で必要不可欠である。特に国内資金でカバーできる余裕が残り少なくなりつつある中、いずれは海外投資家にある程度頼らざるを得なくなることで、海外の保有比率の引き上げは大きな課題である。その中にあり、中国への期待も大きくなる可能性があるが、過剰な期待はどうやら禁物か。

そして、今回の中国による日本国債の売却で明らかになったものに為替への影響の度合いがある。中国による日本国債の購入を円高要因として指摘する声があったが、金額から見てもその影響は少ないと見ていた。実際に8月は単月で2兆円を超える売却を行っていても、それによる円売りの影響は限定的であったとみられ、為替市場でも中国による日本国債の売買に神経質になる必要はなさそうである。
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by nihonkokusai | 2010-10-13 11:43 | 国債 | Comments(0)
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