牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

「日銀の長期国債の買入れについての認識」

10月5日に決定された日銀による包括緩和の中で、長期国債の買入れについて白川総裁は会見で次のように述べている。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1010a.pdf

「先進各国の中央銀行は、いずれも資金供給オペレーションにあたっての基本的な考え方を明らかにしています。日本銀行の場合、長期国債の買入れを資金供給のための主力手段の1つとして大いに活用しており、バランスシート上も最大の資産項目となっています。従って、この長期国債の買入れに当たっての基本的な考え方を明らかにすることは、金融政策運営の透明性を確保する上でも非常に重要であると考えています。」

日銀による長期国債買入れの目的はあくまで、資金供給手段のひとつであるとの認識である。たとえばECBの場合には、国債市場の安定化、市場機能の正常化そのものが目的となっている。また、イングランド銀行の国債買入の目的は、中期的なインフレ率目標を達成するためにマネーと信用の供給量の拡大を通じて名目支出を拡大させることとしている。さらにFRBについては、国債買入は信用緩和政策の一環と位置付け、モーゲージ金利の低位安定を期待したエージェンシーMBSの購入等を補完することを目的としている。

「現在実施している長期国債の買入れは、経済の成長に伴う銀行券需要の趨勢的な増加に対応して、市場に対する安定的な資金供給を目的として行っており、買入れた国債は基本的に安定的に保有することを想定しています。このため、長期国債の保有残高は銀行券の残高を上限とする運営を行っています。また、こうした運営方式であることを予め公表することは、長期国債の買入れが財政ファイナンスを目的とするものではないという趣旨を明確化することによって、長期金利のリスク・プレミアムの上昇を予防する効果も有しています。その意味で、経済の成長に伴う銀行券需要の趨勢的な増加に対応する長期国債の買入れについては、従来同様の考え方で運営していく方針です。」

日銀が2001年3月に量的緩和政策を実施した際に、国債買入れについて「日銀券の発行残高」というキャップをつけた。2001年3月19日の決定会合の議事要旨には次のような記述がある。

「景気低迷が長引いた場合に、長期国債買い切りオペの増額を求める声が強くなるリスクがあることを複数の委員が指摘した。こうした事態に備える意味で、長期国債買い切りオペで成長通貨を供給するという従来からの方針を維持したうえで、これまでの銀行券のフローではなく、発行残高を上限とする歯止めを設けるべきとの方針で、概ね認識が一致した。」

その上で、「日本銀行が保有する長期国債の残高(支配玉<現先売買を調整した実質保有分>ベース)は、銀行券発行残高を上限とする。」と決定されたのである。これは法的に縛られるものではなく、あくまで日銀の内規である。

これについては前副総裁の武藤敏郎氏がダイヤモンド社とのインタビューで次のような発言をしている。

「日銀券ルールには、理論的に明確なものがあるわけではない。日銀があまり沢山の国債を市中から買い過ぎると、日銀が禁じられている直接引き受けと、実質的に変わらなくなるので、何らかの歯止めが必要で、そこにちょうど良い指標として日銀券発行額があったということだ。」

白川総裁も国債買入れについては、財政ファイナンスを目的とするものではないという趣旨を何度も繰り返している。そもそもそれでは財政法また、財政ファイナンスと市場が捉えれば、それにより長期金利の大幅な上昇を招くリスクを懸念している。

次に今回の包括緩和における国債買入れについて、白川総裁は次のように発言している。

「一方、今回の資産買入等の基金による長期国債の買入れについては、これは短期金利の追加的な引き下げ余地が限られているという現在の情勢を踏まえて、長めの市場金利の低下を促すことを目的として実施するものです。将来に亘って、経済・物価情勢の如何にかかわらず実施していくという措置ではありません。この点は、先程の銀行券需要増加に対応した長期国債のオペとは明らかに異なるものです。今回の措置は、この包括的な金融緩和政策の一環として導入した臨時異例の措置であり、そうした趣旨を明確にするため、バランスシート上も、新たに創設する資産買入等の基金に分別管理の上、保有することにしました。また、買入れ対象となる国債は、残存期間1~2年程度のものに限定し、長期国債と国庫短期証券を合計した具体的な買入れ額も定める予定にしています。」

包括緩和における国債買入れの目的は「長めの市場金利の低下を促す」ことにあるとしている。ちなみに、日銀の「長めの金利」とはターム物金(期日物)利のことを指すことが多い。ターム物金利とは、取引期間が2営業日から1年程度の期間の金利である。

銀行券需要増加に対応した長期国債のオペとは異なり、臨時異例の措置であることを主張している。そのため、新たに創設する資産買入等の基金に分別管理される。しかし、日銀のバランスシートに加わることは確かであり、実質的には目的は異なれど日銀券ルールに縛られないかたちでの国債買入れの増額である。

ちなみに1967年(昭和42年)1月より日銀は買入債券の対象に発行後1年経過の「国債」を追加した。この際の理由は「成長通貨の供給を目的」としたのである。
[PR]
by nihonkokusai | 2010-10-08 11:49 | 国債 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31