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「何故、8月10日に日銀は動かなかったのか」

8月9日から10日にかけて開催された日銀の金融政策決定会合の議事要旨が発表された。同日10日に開催された米FOMCでは、MBSの償還資金による国債への再投資を表明し、これを追加緩和とした。現実にはFRBのバランスシートの規模を維持するだけで追加緩和とは認識しづらいが、日銀が動かずFRBが「追加緩和」を行ったことで、円高ドル安を進行させたひとつの要因となった。

結局、このときには追加緩和策を決めなかった日銀は8月30日に臨時の決定会合を開催し、新型オペの拡充策という「追加緩和」を実施している。それでは、なぜ8月10日の会合では追加緩和を見送っていたのか、議事要旨の内容から見てみたい。

注目すべきは為替に関する部分で、最近の為替動向については、「多くの委員は、円高が輸出や企業収益の下押し要因になりうると述べた。また、多くの委員は、円高やそれに伴う株安が、企業や家計のマインドに与える影響にも、注意が必要であると指摘した。ある委員は、足もとの円高水準が持続するリスクが高まっているとの見方を示した。」

円高リスクに対して警戒はしているものの、「複数の委員は、為替円高が経済全体に与える影響は、世界経済全体の情勢、企業収益や金融環境の動向など、様々な要因に依存するため、バランス良く全体を評価していく必要があると」との指摘もあった。

さらに、ある委員が「円の対ドル相場が、1995 年の円高のピークに近づいていることが話題となっているが、その後の日本の物価上昇率が低かったため、実質実効為替レートでみると当時ほどの円高ではないとした上で、円高と物価下落を、別々のものではなく、総合的に捉えて経済への影響を評価する必要がある」と指摘していた。このある委員とは誰なのであろうか。

それはさておき、この会合では政府からの出席者からも、特に追加緩和を望む発言はなかった。FRBが同日のFOMCで動くことはある程度日銀も察知していたと思われるが、その内容がMBSの償還資金による国債への再投資であるならば追加緩和としての実質的な効果はないことで、為替市場に与える影響は限定的とみていたのであろう。

しかし、米FRBのバーナンキ議長はFOMCの決定を「追加緩和」として、動かぬ日銀と動いたFRBとの違いを印象付けることとなった。自国通貨安を意識しての行動は、結果としてはFRBのほうが上手であったと言うことであろう。少ない手札をタイミングよく有効活用したとも言える。

この日銀の決定会合の結果は全員一致での現状維持であった。30日の臨時会合では須田委員が新型オペの拡充策については反対票を投じて全員一致が破られてはいるが、ここにきての決定会合はほぼ全員一致のケースが目立っている。もし、多少なり日銀も動くそぶりを見せれば市場に影響も出る。8月10日に日銀は動かずとも、ここで1人か2人の委員が、追加緩和策を議事提案していれば、市場が見る日銀の印象に変化があった可能性がある。

日銀の金融政策決定会合は、いろいろな分野の代表者が、それぞれの意見に基づいて最終的には多数決で金融政策等が決定される仕組みである。あまりに考え方が同方向であると、硬直的なものとみられてしまいかねず、柔軟さを示すためにも、意見の違いをもう少しはっきりさせ、少なくとも全員一致が続くような事態は避けるべきではなかろうか。
by nihonkokusai | 2010-09-10 10:40 | 日銀
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