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「菅首相のインフレターゲット発言」

菅直人首相は衆院予算委員会で、現在の日本のデフレ状況について「何とか長年続くデフレ状況から脱却しなければ(ならない)。日本の経済(成長)、財政再建はここからスタートすることが重要」との認識を示し、「デフレ脱却議連の提示している考え方は、基本的に私自身と共通の考え方だ」と語った。

デフレ脱却議連は提言の中で、政府が2─3%の間で消費者物価指数(CPI)の上昇率目標を設定し、日銀が目標の上下1%以内にCPIを維持するインフレ目標の導入を掲げているが、これについて菅首相は「インフレターゲットの設定を政府が行い、手段は日銀に任せるという考え方は確かにある」としながら、「現実には、政府と日銀がかなり議論しており、この間、ほぼ同一の目標で行動している」と指摘。「日銀には、ある程度の自主性が認められているが、政府と協調してやっていくと理解しており、現実に協調してやってもらっている」と政府と日銀の協調姿勢をアピールした(以上、ロイターより)。

日銀法第4条に、「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」とある。ただし、第3条には「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」ともあり、菅首相の「ある程度の自主性が認められているが、政府と協調してやっていくと理解」はその意味では正しい。

「インフレターゲットの設定を政府が行い、手段は日銀に任せるという考え方」への言及については、インフレターゲットを採用しているイングランド銀行を意識したものであろう。1998年のイングランド銀行法の施行により、金融政策委員会は、政府が設定するインフレ率を達成できるように金融政策を行っている。

しかし、イングランド銀行は1998年のイングランド銀行法施行以前までは、伝統的に政策金利などの決定そのものを大蔵省(財務省)が行っていたことで、政府からの独立性を高めたものの、インフレターゲットの設定は政府に残ったかたちとなったものである。世界的に中銀は政府からの独立性を高める流れとなっている中で、菅首相の発言では、日銀はむしろ独立性を弱める方向となる。つまり中央銀行をめぐっての時代の流れに日本だけが逆行するかのようである。

以前に日銀の白川総裁は「今回の金融危機を通じて、インフレターゲットについても反省気運が生まれてきている。物価の動向だけに過度の関心が集まり、蓄積しつつあった金融経済の不均衡を見逃し、金融危機発生の一因になったのではないかという問題意識が以前より高まっている」と述べている。また、武藤前日銀副総裁も「インフレ目標を掲げたらどうかという指摘があるが、私はこれを採用すればデフレを脱却できるとは全く考えていない」と述べたとも伝わった。

民主党のデフレ議連だけでなく、みんなの党もインフレターゲット導入を意識した動きを見せている。インフレ目標を掲げその目標に対して、手段は日銀に任せるというのは、目標そのものが金融政策で限界がある以上、かなりの無視を強いてくることになる。それはそれで大きなリスクを伴ってくる。日銀も昨年12月の臨時の金融政策決定会合あたりから、より政府の意向を意識し、デフレとの認識を強めた上での政策変更を行ってきている。これは日銀が政府と協調している姿勢を強めたようにも見えるが、そこには日銀の独立性に対しての疑問を呈する政府の一部の動きを意識したものでもあったのではなかろうか。
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by nihonkokusai | 2010-08-02 12:37 | 日銀 | Comments(1)
Commented by 348ts at 2010-08-03 10:55 x
インフレ基調の下、過度のインフレを抑止するインフレターゲット政策はたくさんあると思いますが、デフレ基調の下でインフレにもっていくためにターゲットを置いて金融政策を行うとするインフレターゲット政策を実施している先進国は聞いたことがありません。
しかも、資金需給バランスの調整でインフレにもっていくことはできないと分かっているので、通貨の信用をそぎ落とす方法でインフレにしようとするしかないようで、極めて危険な賭けだと思います。
ある方が、「どうしてもインフレにしたいのならば、コピーした偽札を違法としないと宣言すればいいだけ」と皮肉っていましたが、通貨の信用を貶めるやり方は、程度の違いはあれど、まさしくこのとおりです。
政治家達がこのような愚挙を強行するのなら、それはそれで、その程度の国家・国民だったということになりますかね・・・
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