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「長期金利はなぜ低位安定しているのか(その1)」

7月23日に発表された「平成22年度経済財政報告(経済白書)」より、日本の長期金利の低位安定の理由を探ってみたい。

白書では、日本の政府債務残高はG20諸国中、突出して大きく、債務残高は毎年の財政赤字の累積であり、過去からの赤字が積み上がって現在の債務残高ストック財政赤字の拡大は、債券市場における需給悪化を通じ、長期金利の上昇要因となり得ると指摘している。  

さらに日本は債務残高が大きいだけでなく、返済能力も現時点では小さい点も指摘している。現在の歳入構造のままでは、こうした膨大な債務残高を返済する能力は乏しいといわざるを得ない。

マーケットが財政赤字のファイナンスに対して疑念を持つようになれば、それは財政リスクプレミアムとしてさらに長期金利を引き上げる要因になる。さらに財政収支の悪化が長期金利の上昇につながると、今度は長期金利の上昇が利払費の増加等を通じて、財政状況をさらに悪化させることにより、負の連鎖が生じることが財政悪化のリスクといえる。

ところが、日本は債務残高の規模が突出する一方、利払負担比率(歳入比)はG20諸国中カナダと並び、最も低く抑えられている。なぜ日本は財政状況が他国に比べて突出して悪 いにもかかわらず、長期金利の低位安定が継続しているのだろか。

その要因としては短期金利の低さとともに、経済成長率と物価上昇率が低いことが挙げられる。特にこの傾向は、90 年代と2000 年代において顕著に見られている。これはつまり、90年代のバブル崩壊による資産価格の下落を背景としたデフレが大きく影響したものとみられる。

短期金利の低さが、景気の弱さや物価上昇率の低さを反映した日銀の金融政策によるものであるとすれば、日本の長期金利の低さは景気の弱さと物価上昇率の低さでその多くが説明できるとしている。つまりはデフレが長期金利の大きな押し下げ要因となっていることを示している。

白書では80年代後半から90年代初めのバブルの生成と崩壊、そして、その後の調整の遅れが、日本の基調的な物価上昇率の低さに影響していると指摘している。さらに輸出寄与度の高さなどがさらに物価上昇率を抑えこむ要因となっているとの指摘もあることで、日本におけるデフレからの脱却は容易ではない。

先進各国では80年代から2000年代にかけて概ね長期金利の水準が低下しているが、その要因は異なっている。短期金利の低下は共通しているものの、経済成長率と物価上昇率の低下が主たる抑制要因になっているのは日本だけという指摘である。それだけ日本のデフレが深刻化し、資金が国債に向かいやすい構図となっていたものと思われる。

ただし、その一方で、近年の財政赤字の拡大が、他国に比して大きな長期金利の押上げ要因になっていることには注意する必要があるとの指摘もあった。これについては、個人的にはやや違和感がある。長期金利は2010年7月に入り、2003年8月以来の水準にまで低下しているのである。参院選による民主党の敗北もあり、今後の財政健全化についてはあまり進展がみられない中での、長期金利の低下である。ただし、2003年6月のように長期金利が1%を大きく下回るようなこともないのも確かである。日本の財政赤字拡大は長期金利の押上要因というよりも、下方硬直性の要因にはなっている可能性がある。
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by nihonkokusai | 2010-07-29 11:48 | 債券市場 | Comments(0)
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