「長期金利の2%という防波堤が決壊したら」
もしも、堤防が決壊し国債への信認が失われたされたとき時には、その経済に与える影響はギリシャ国債の比ではありません。日本の財政悪化の顕在化が抑えられていたのは、これまでの超低金利に支えられていた側面があり、その前提が崩れることで状況は一変します。
まず、日本国債がそのほとんどを国内資金で賄っていることが裏目に出る可能性があります。つまり日本の長期金利が2%を大きく超えてくるということは、国債価格の急落を意味します。国債を保有している銀行や、生損保、年金などが大きな含み損を抱えることとなります。
国債の信認失墜は、当然、日本の通貨である同様の信用力となっている円の価値も失墜させるでしょう。急激な円売りとともに、こちらは海外投資家の保有のも大きい日本株も、当然ながら暴落することが予想されます。
また、長期金利の上昇により、国債の利払い負担が増加することになり、これがさらなる財政悪化要因になります。
ある程度の長期金利の上昇により、米国債やドイツ連邦債などと比較して利回りの上から遜色がなくなれば、海外投資家からの日本国債への買いが入る可能性があります。しかし、格付け会社による日本国債のジャンク級にまで大幅に格下げするなど日本国債への信認は失墜も予想されることで、海外投資家による買い支えもあまり期待できません。
日本国債の消化が困難になるとなれば、これまでの海外の事例からみてIMFの管理下に置おかれる可能性が高いとみられます。しかし、あまりの巨額の債務残高のためで、IMFでも対応しきれなくなるという前代未聞の事例になる可能性もあります。
最後の手段として日銀による日本国債の直接引き受けが実施されることが想定されます。しかし、これはあくまで禁じ手です。一時的にはデフレが解消されるなどの効果もあるでしょうが、財政規律そのものが無視されるかたちとなり、それによるハイパーインフレをいずれ引き起こす可能性が高くなります。そして、戦後のように日本経済そのものがリセットされて初めて、日本の財政問題が解決するとなれば、その負担は国民自身にのしかかって来ることは必然なのです。
このような最悪の事態を発生させる前に、日本国債の信認を継続させ維持し、今後も国債の消化が順調に行われるようにしなければなりません。そのためには、政府は財政規律を守る姿勢を強化し、打ち立てた財政再建に向けた目標を達成させるするための努力が必要となります。