「経済統計の見直し、交易条件指数とGDP」
交易条件指数の動きから短期的な収益環境の変化に関する情報を得ることができるとされているが、収益環境が改善しているにも関わらず指数が悪化しているケースがこれまでにも見られていた。原材料価格はコストの一部でしかないことで、元素医療各より製品価格の上昇率が小さくても企業の採算は悪化していない場合がある。
日銀のサイトでも、「交易条件の考え方は、(a)あくまで基準時点の投入・産出構造を前提としている(技術革新や製品構成の変化を考慮していない)こと、(b)実際の企業収益には、減価償却費や人件費、金融費用等の固定費負担の多寡が大きく影響する(生産量が増えれば、固定費負担は小さくなる)こと、(c)財以外の投入価格(サービス価格)の動向を考慮していないこと、等の限界がある点には注意が必要です。」(http://www.boj.or.jp/type/exp/stat/pi/faqiopi02.htm#4-3)。
このように指数と実態のズレはすでに市場でも意識されており、上記の要因などにより、交易条件指数の変化が市場に影響を及ぼすことはあまりなかった。このため、今回の公表とりやめによる影響は限られたものとなりそうである。
また、内閣府は8月16日に発表する4~6月期GDP速報値から国内総生産(GDP)統計の推計方法を見直すことを発表した。これまでのGDP統計では、速報値と1か月後に発表される改定値では、設備投資などの伸びにズレが生じることがあった。
特に2009年7~9月期のGDPでは改定値が速報値に比べ、設備投資などの要因により、大幅な下方修正となっていた。速報値では実質GDPの年率換算がプラス4.8%となっていたが、改定値ではプラス1.3%に大幅下方修正された。この要因としては、速報値での設備投資の推には鉱工業生産指数の資本財出荷指数などが推計のための指数なっていたとされ、こちらが大幅増となった。しかし、その後に発表され改定値の推計となる法人企業統計調査での設備投資大幅マイナスとなっていたことが要因とみなされた。
日経新聞によると、今後は設備投資の速報値を推計する際に、利用するデータの一部から不規則な変動を取り除く。改定値の精度を高めるため法人企業統計で新たに調査対象となった金融・保険業のデータを使うことを決めたそうである。
ただし、やはりズレが大きいと指摘されていた民間在庫投資については今後の検討課題とし持ち越しとなったそうである。
GDPはもちろん経済指標として最も注目されるもののひとつであり、この推計方法の見直しには注意が必要になる。