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「日銀は追加の緩和策を決定」

日銀は3月16日から17日にかけての金融政策決定会合において、政策金利については全員一致で現状維持としたが、固定金利オペを大幅に増額することにより、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充することとした。この新型オペの「拡充策」については、須田委員および野田委員が反対した。

白川日銀総裁はその後の記者会見において、今回の固定金利オペの大幅に増額する拡充策について、「今回の措置は追加緩和措置だ」と発言した。ただし、今回採用した措置は量的緩和政策ではないとも発言している。だからこそ、決定会合後に発表された「当面の金融政策運営について」には具体的な「増額額」が明記されていない。「どの程度の金額が適切なのかは現場部署に委ねる」と総裁は発言している。

このため、昨日の政策委員会・金融政策決定会合後には、金融政策に関しての「当面の金融政策運営について」との声明文とは別に、「固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションの運用について」という文章を公表している。この中で、期間3か月、オファーは週2回程度、資金供給額を8千億円として、その結果「オペの資金供給規模は、現在の10 兆円程度から、20兆円程度に増加することとなります」と表記している。

たしかに量的緩和策ではないため、20兆円という数値を出せばその数値を目標値として捉えかねず、あくまで「やや長めの金利の低下を促す措置」という曖昧な表現で、追加緩和策としたのであろう。

ちなみに同じ資金供給手段であるところの国債買入については、「当面の金融政策運営について」において具体的な数字が表記されている。

たとえば2009年3月18日の決定会合後に発表された「当面の金融政策運営について」には、「これまで年16.8 兆円(月1.4 兆円)ペースで行ってきた長期国債の買入れを、4.8 兆円増額し、年21.6 兆円(月1.8 兆円)ペースで実施する(当月より実施)」とある。

この際の国債買入増額の理由として、「金融市場の安定を確保するため、引き続き、積極的な資金供給を行っていくことが重要と判断しました。こうした観点から、長期の資金供給手段を一層活用し、円滑な金融調節を行っていくため長期国債の買入れを年4.8兆円増額することとしました。」と白川総裁は会見で述べている。

ちなみにこの際には、追加緩和との表現は使われていない。「あくまでも金融調節上の必要性に基づいて行うもの」としているものの、「当面の金融政策運営について」には具体的な数字を含めて明記されていたのである。

あまり細かいところを突付いてもいたしかたないが、今回の「追加緩和策」については、政策金利の変更でなければ量的緩和策の一環でもないという、かなり曖昧としてものであった。

これはあくまで、4月以降の企業金融支援特別オペレーションの残高が漸次減少していくことを踏まえた措置であるとともに、政府のデフレ対策と呼応しての「追加緩和」の意味合いを持たせるものであろうし、実際の効果のほどは限定的であり、アナウンスメント効果もかなり意識したものであると思われる。

二人の審議委員が反対した具体的な理由は議事要旨や議事録の発表を待つ必要があるが、政府側からの圧力に屈したかたちと捉えかねない措置ことへの反対であったかと思われる。

今後は更に日銀に対して政府からの追加緩和期待が強まる可能性がある。福井前日銀総裁は総裁に就任直後に、当時の政策目標である当座預金残高目標を立て続けに引き上げて、金融緩和に積極的であることをアピールした。実際に当座預金残高目標の引き上げがどの程度の緩和策になっていたのかはさとおいて、アナウンスメント効果は絶大であり、マスコミや政治家などからの評価を得ていた。

ところが、福井前総裁は当座預金残高の引き上げは行なっても、国債買入の増額はしなかった。日銀は資金の供給手段とともに吸収手段もあることで、いったん引き上げた当座預金残高を減らすのは技術的にはさほど困難ではない。それは実際の量的緩和政策の解除時を見ても明らか。ところが日銀による国債買入の額を減らすことは、実際に容易なことではない。

つまりは、今後、白川日銀が行なえる追加緩和策については、前任の福井総裁の時のように量で操作できない以上は、なかなかフレキシブルには行いづらいと思われる。できれば国債買入増額は避けたいであろうが、その代替手段は限られる。今回、新型オペはあくまで金額の拡充であり、期間の延長は行わなかった。これは追加カードを一枚残しておきたかったからともいえそうである。
by nihonkokusai | 2010-03-18 10:47
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