「日銀、追加緩和を検討」
何故、4月の決定会合で決めるかもしれないという観測記事がこのタイミングで掲載されたのであろうか。さらに昨日の中短期債への妙な積極的な買いの背景が日銀の金融緩和期待であったことで、この記事の内容との関連性もありそうである。この日銀の動き、というか動くかもしれないという観測情報が事前に流れていた可能性がある。昨日の中短期債の動きは、単純に円高になったからの思惑で買ったというより、ある意味確信犯的な買いにも見えた。
追加緩和については、新型オペの期間延長か規模拡大となる見込みだとかで、これには特段目新しさはない。参考までに新型オペの期間を現行の3か月から6か月程度、供給規模を現行の10兆円から拡大することが、議論の中心になるそうである。
そもそも何故このタイミングで追加緩和観測が流れたのか。菅財務相や亀井金融担当相などによる執拗な日銀へのプレッシャーがあり、日銀としても何らかの動きは見せざるを得ないと認識したのであろうか。また、ここにきての円高の動きも後押しした可能性はある。
ただし、国債の買い入れ増額については財政ファイナンスにくみすると捉えられかねず、そうなれば長期金利の上昇を招く懸念がある。先日の野田審議委員の講演・会見でも同様の発言があった。そのため、追加緩和を行なう姿勢は示すものの、国債買入増額要求については拒否する姿勢を示したのであろうか。政府による財政規律への姿勢がはっきりしない限りは、日銀が国債買い入れ増額を行なうことは確かにリスクがある。
しかし、これでは追加緩和が、景気とかデフレとか円高対応ではなく、政府向けの対応策のようにしか見えない。現実にすでに1年物あたりの金利までかなり低下している中にあって、この追加緩和のよる効果はアナウンスメント効果程度かと思われる。もちろん全く効果がないと言うわけではないが。
はたしてこの記事はあくまで観測記事なのか。情報出所が政府なのか日銀なのかによって読み方も大きくことなってくる。しかし、このような観測記事が出るような事自体、昔に逆戻りしつつあるように思われる。一部の投資家の先んじた動きやマスコミの観測記事では、市場との対話は成り立たなくなる可能性がある。政府も日銀も市場との対話をないがしろにすれば、のちに市場からの反発を受けることもありうる。こういったものにはマスコミも含めて細心の注意が求められよう。