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底が見えない恐怖感から先が見えない不安感へ

日銀の白川総裁は1月29日に内外情勢調査会において「最近の金融経済情勢と金融政策運営」と題する講演を行なった。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1001a.pdf

現在の日本経済について、「底が見えない恐怖感」は去ったとはいえ「先が見えない不安感」は依然として大きい状況、との表現はなかなか言い得ている。株式市場でも「底が見えない恐怖感」は去ったものの、経済ばかりでなく政治や財政の悪化についても「先が見えない不安感」があり、上値が抑えられている。

リーマン・ショック後の金融市場で取引相手に対する信認が大きく崩れ、経済活動に必要な資金が行き渡りにくくなった。意図せざる金融引き締めが世界的な規模で突 然起きたことで、支出を控える動きが広がり。その結果、世界の需要が瞬間的に蒸発した。需要蒸発の影響を最も受けたのは、資本財や耐久消費財であり、自動車や電機、一般機械など日本が得意とする分野を直撃した。

ただし、世界経済は昨年春頃には下げ止まり、現在は回復の段階に入っている。回復の主体は新興国ないし発展途上国であり、2010年の成長率に占めるこれらの国の寄与は7割にも上っている。

新興国・資源国の急速な景気回復についての要因としては、まず人口が増加する中で、生活水準向上に伴う消費活動の活発化や社会インフラ整備の必要性など、もともと内需の潜在的な力が強いことを挙げている。さらに新興国・資源国においても、今回の危機に対応するため、積極的な景気対策を実施したこと、そして先進国内では十分な投資機会を見出せないリスク・テイクの資金が新興国・資源国に大量に流入していることが挙げた。

しかし、米欧などの先進国経済は、急激な収縮からは持ち直したものの、依然として自律回復力は弱い状態が続いている。これはリーマン・ショックの背景に、バランスシート調整という構造的な問題があったためである。

バランスシートを修復する作業は、世界経済が持続可能な成長経路に復帰していくために避けては通れないプロセスだが、その間は経済に対し下押し圧力がかかり続けることを認識する必要があると総裁は指摘している。

今回の回復過程で大きな役割を果たした金融政策と財政政策については、中央銀行が金融市場に資金を供給する際の政策金利自体は下限で張り付いていても、金融市場の安定化を促すことを通じて、金融緩和が実質的に強化されたと指摘。

財政政策の役割も重要だったとしながら、同時に財政赤字は拡大し、政府債務残高は著しく増大した。政府は民間のリスクや債務を肩代わりしたが、国際金融市場の参加者は財政赤字や財政規律の問題にも大きな関心を払うようになってきたと指摘している。

これに関連し興味深いとして総裁が指摘したのが、FRBが昨年3月から10月まで行った国債の買入れであった。

FRB は、実施に当っては、この買入れが中央銀行による財政ファイナンスや長期金利の特定水準への誘導を目的としたものでないことを繰り返し強調。FRBによる買入れ規模は日銀の国債買入れと比較すると、経済規模との対比では日本よりもはるかに少ないものであったにもかかわらず、中央銀行として通貨コントロールへの信認確保をそれだけ重視していたように思われる。

どうやら、今後の日本の財政悪化にともなって日銀の国債買入増額要請が出る可能性があるが、そのための予防線をやんわりと張った指摘のように思われる。
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by nihonkokusai | 2010-02-03 09:33 | 日銀 | Comments(0)
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