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「日本のソブリン・リスク」

 国債にも当然ながら信用リスクが存在する。信用リスクとは、どこかに貸したお金が約束どおり返ってこないとか、あるいは購入した債券の利息や償還金をあらかじめ決められた条件で支払うことができなくなる(債務不履行)リスクのことを示す。信用リスクはデフォルトリスクといった使われ方もする。実際に企業が倒産したり国の財政が破綻してしまうケースだけでなく、倒産する可能性が高くなることで債券の価格が下落することなども信用リスクに含まれる。

 債券市場における信用リスクは、市場においてリスク・フリー金利に上乗せされるプレミアムといった形で表わさられる。それはひとつの信頼感の証とも言えよう。債券の発行体などに対してどの程度信用できるかはその上乗せ金利(スプレッド)という数字で表現される。ちなみにその元になるリスク・フリー金利は通常「国債」の金利となっている。

 そして、国債そのものの信用リスクはソブリン・リスクもしくはカントリー・リスクと呼ばれるものである。ソブリン(sovereign)とは政府もしくは政府機関の発行する債券のことを示す。そして、ソブリン・リスク(sovereign risk)とは政府などに対する融資のリスクを意味している。これに対してカントリー・リスクとは海外投融資や貿易の対象となる相手国の政治、社会、経済などの環境基づいた信用度の事である。

 このソブリン・リスクやカントリー・リスクなど国の信用リスクを確認ために使われるものに「格付」がある。この格付けとは、債券などの元本や利息が、約定通りに支払われるかどうかの確実性を、専門的な第三者である格付け会社が評価して段階的に表示したものである。代表的な格付会社としては海外ではムーディーズ・インベスターズ・サービス、スタンダード&プアーズ、フィッチ・レーティングスなどがある。国内では格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)などがある。

 たとえば、ある会社が債券を発行したいとき、格付け機関に費用を払って格付けを取得する。もしこの格付けが高いと、その企業の安全性が高いことが認められたわけで、高い利子をつけなくても債券を発行できるようになる。

 格付け会社は、こういった企業の格付けのほかに、独自で国の格付けを実施している。日本では1998年11月に米国の格付け会社のムーディーズ・インベスターズが日本国債を最上級のAaa(トリプルA)からAa1(ダブルA1)に引き下げたことが大きな話題を呼んだ。また、スタンダード&プアーズは2010年1月26日に日本ソブリンのアウトルックを「ネガティブ」に変更したが、この理由として民主党政権の政策では財政再建が従来の予想より遅れるもようであることを指摘した。

 ちなみに格付会社による日本国債の格下げによる国債価格への影響はこれまで限定的となっている。その要因としては日本国債が国内資金でそのほとんどが賄われており、国内投資家が国内金融商品で最も安全な資産とされる日本国債を、格下げを理由にして売ることはしなかったためである。しかし、格付け会社の日本国債の格下げは海外からの警鐘でもあり、日本の政府のみならず国民に強く財政危機を意識させたことも確かである。

 ただし、2008年のリーマン・ショックなどをきっかけとした世界的な金融経済危機の際には、格付け会社の格付けに対しての問題点も指摘された。格付け会社の格付は絶対的なものではないことも確かであり、あくまで信用リスクを見る上での参考程度に考えておく必要がある。

 また債券が債務不履行(デフォルト)に陥るリスクに備える保証料を示すCDSスプレッドも信用リスクを見るためのひとつ参考になる。通常5年物国債のCDSスプレッドが取引されています。この場合のCDSスプレッドとは、その5年物国債の年間保証料といえるものである。ただしCDS市場そのものの規模は小さく参加者も限定的であるため、日本ソブリンのCDSスプレッドの変化についても思惑的な動きによることも多いのが実情であることも注意したい。

ムーディーズとS&Pによる日本国債格付の推移

1998年11月ムーディーズ、日本国債格付けをAaa(トリプルA)からAa1(ダブルA1)に引き下げ
2000年9月ムーディーズ、Aa1からAa2に引き下げ
2001年2月S&P、AAAからAA+へ引き下げ
2001年9月S&P、アウトルックを「ネガティブ」に変更
2001年11月S&P、AA+からAAへ引き下げ
2001年12月ムーディーズ、Aa2からAa3に引き下げ
2002年4月S&P、AAからAA-へ引き下げ
2002年5月ムーディーズ、Aa3からA2に引き下げ
2004年3月S&P、アウトルックを「ネガティブ」から「安定的」に変更
2006年5月S&P、アウトルックを「安定的」から「ポジティブ」に変更
2006年6月ムーディーズ、アウトルックを「安定的」から「ポジティブ」に引き上げ
2007年4月S&P、AA-からAAへ引き上げ
2007年7月ムーディーズ、A2を引き上げ
2007年10月ムーディーズ、A2からA1に引き上げ
2008年6月ムーディーズ、A1からAa3に引き上げ
2009年5月ムーディーズ、 Aa3からAa2に引き上げる一方、 外貨建て債務格付けをAaaから引き下げ、両者をAa2に統一
2010年1月S&Pはアウトルックを「安定的」から「ネガティブ」に変更
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by nihonkokusai | 2010-01-28 10:33 | Comments(0)
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