「現政権と日銀の距離感」
16日に発表された7~9月期GDP1次速報において、国内需要デフレーターが前年同期比2.6%下落と約51年ぶりの下落幅を記録し、これを受けて政府は20日に公表する月例経済報告で約3年ぶりにデフレの表現を復活させる可能性が高まったと伝えられた。
なぜこのタイミングでのデフレ認定なのか。これは政府がデフレを認定することで、日銀に政策対応を促す狙いとの見方もできる。
昨日、仙石行政刷新相は2009年度の国の税収について、38兆円以下となる可能性を示唆し、これにより、2009年度の国債発行額は50兆円を超える可能性が出てきた。 2010年度税収見積もりはこの2009年度の税収がベースとなることで、来年度も国債発行にかなりの部分、頼らざるを得ない。来年度の新規財源債が、44兆円以下に収められるかどうかは微妙なところともなり、もしも国債需給悪化を意識すれば、暗に政府が日銀に国債買入の増額などを求めてくる可能性もありうる。
また、亀井金融・郵政担当相は、需給ギャップが40兆円になろうという時に、日銀はもっと積極的な役割を果たしていくべきだと述べた。政府が日銀を何か聖域だという感覚でとらえすぎている気がする、とも発言していた。ただし、亀井氏は以前から日銀の金融政策に批判していたことで、この発言が直接日銀の金融政策に影響を与えることは考えづらい、しかし、金融担当相の発言でもある。
政府は日本銀行との定期協議の場を新たに設置し、11月下旬にも初会合を開く方針を固めたとも伝えられている。この会合には、政府側が菅国家戦略相、藤井財務相、内閣府と財務省の副大臣・政務官各2人、日銀側が白川方明総裁と副総裁2人の計9人とする方向で調整しているとされ、亀井金融相も、参加に意欲を示していると伝えられた(日経)。
この会合での中心的な役割をするのは、菅国家戦略相かと思われる。はたして菅国家戦略相は日銀に対してどのようなスタンスで望むのか。藤井財務相は立場上もあり、日銀の独立性を尊重してくるとみられるが、まったく反対の立場に金融担当相がおり、菅国家戦略相がどのようなバランスをとってくるのか注目したい。これはつまり、日銀と現政権の距離感を図るベースともなりうる。
さらに日銀の人事権も政府が握っている。日銀23条に「審議委員は、経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者のうちから、両議院の同意を得て、内閣が任命する。」とある。現在、その審議委員は一人空席である。12月2日には水野審議委員が任期満了となり、このままでは12月3日以降、審議委員は二人空席となることになる。果たしてこの日銀の審議委員人事をどうするのか。この人事次第でも日銀と現政権の距離感が計れそうである。