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「吉野座長の長期金利上昇への警戒」


 QUICKに、国債投資家懇談会で座長を務める慶應義塾大学の吉野直行教授のインタビュー記事が掲載された。この中で吉野座長は、長期金利が10月に入り上昇基調を強めている要因について、「衆院選後に発足した新政権が、財政赤字をどのように回復していくのかメッセージを発信していないことが大きい。市場にとっての不安材料となっている」と指摘している。

 今後の金利動向については、「国内の投資家は国債を大量に吸収し『たらふく食べた』たと思い始めている。今後も大量発行が続くと需要と供給の観点で考えれば金利は上昇する。需給が崩れれば、過去10年近く金利の上限となってきた2%も上回る可能性はある」(QUICK)

 吉野座長がこのタイミングで2%をも上回る長期金利上昇を警戒するような発言が出たことには注意も必要であろう。吉野座長は財務省の国債管理政策についても常に中心的な役割を演じてきた方であり、その発言には市場も関心を払っている。今年6月のロイターとのインタビューで吉野座長は「国債を買う余力はまだ、あるのではないか」との発言もあったが、政権交代後に国債需給についてはこれまで以上に危機感を強めていることがうかがえる。

 「金融機関を経由して個人資産が国債を購入してきた。住宅ローンなど負債を差し引いた金融資産総額は約1000兆円。国債の消化可能額としては既に8~9合目まで到達している印象だ」(QUICK)

 貯蓄率の低下も加わり、国債を購入している原資に限界が近づいているであろうことは、吉野座長もかなり意識しているようである。

 この対策としては、「需要と供給を反映した金利上昇は健全だ。速度が速いようだと問題だが。対策としては外国人投資家が日本国債を保有したいと思わせるような制度設計が必要だろう。しかし、外国人の保有比率が高まるということは、将来世代が借金を返済する資金が国外へ流出することを意味するため大変なことでもある」(QUICK)

 今後の国債増発等により需給悪化が意識され、それにより金利が上昇すれば、海外投資家を含めて投資家にとり、日本国債の利回りが魅力的な水準となってくる。もちろん国債への信認が継続されていることが前提であるが。さらに海外投資家が日本国債を購入しやすいような制度設計も今後は重要である。国内資金で賄えなくなれば海外資金に頼らざるを得ない。ただし、将来世代が国債という借金を返済する資金そのものが国外へ流出することの懸念も吉野座長は指摘している。

 「財政再建を進めるには国の予算の決め方を抜本的に変えなくてはならない。これまでは歳出額が決まってから財源を考えてきたが、税収をベースに歳出を考えればいい。限られた金額で予算を組む必要が生まれればおのずと無駄も削減されていく。最近の金利上昇に対し政治は真摯(しんし)に受け止めて欲しい」(QUICK)

 最近の金利上昇程度では、現政権はあまり考え方を変えることはないかもしれない。しかし、吉野座長が2%超えの可能性を指摘したように、最近の金利上昇が今後の長期金利の大幅上昇の予兆となる可能性もある。ある程度の長期金利上昇は投資家ニーズを強めるものの、急激な上昇はむしろ国債への信認を弱めることにもなりかねず、当然ながら利払い負担などにも影響を与えてくる。
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by nihonkokusai | 2009-11-05 09:37 | 国債 | Comments(0)
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