「今後の国債増発の行方」
政府による今年度の補正予算の見直しは目標としていた3兆円近くなると見られる。今年度の税収見積もりの下方修正分が約6兆円程度予想されることで、単純に差し引けば、3兆円程度の国債が今年度分として増発される可能性がある。
しかし、今年度の補正予算の見直しはそもそも新たな政策の財源としての目的も持っている。このため年末に向けては、今年度の第二次補正予算とともに来年度予算の策定も含めて、総合的な予算編成となるとみられる。
今年度の二次補正予算については、今後の景気の先行きについて不確実性が大きく下振れリスクもあることで、2010年夏の参院選挙も意識して政府は雇用環境の改善などの景気対策を講じる可能性がある。その財源として赤字国債が発行されることも考えられる。
さらに来年度予算については、一般会計の概算要求が最大90兆円を超えて、過去最大規模に膨らむ可能性が出てきた。
民主党が衆院選マニフェストで掲げた公約を実現のために必要な約7兆円の支出などが上乗せされ、一般歳出は50兆円を大幅に超える規模となる。地方交付税が17兆円程度、国債の償還などに充てる国債費が22兆円程度見込まれる。このため歳出総額は90兆円を超える可能性が高まった。
歳入面からは、税収は2009年度当初予算で見込む46兆円程度から、企業業績の悪化による下方修正分に加え、民主党の公約には暫定税率の廃止もあるためこの2兆円程度の減少も含めると、40兆円を割り込む可能性が高い。財務省の平成21年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算によると税収以外のその他収入については8.2兆円程度を見込んでいる。
最終的な歳出総額などが明らかにならないと、必要となる国債発行額の想定も難しいものの、鳩山首相は赤字国債増発の容認やむなしとの発言するなど、来年度の国債発行額は今年度の国債発行額(補正後44兆円)を上回る可能性が出てきた。
鳩山首相は衆院選期間中に国債発行額について、「これ以上増やしたら国家はもたない、当然減らす努力をしなければならない」と述べていたが、結果として国債発行額はさらに増加される可能性が強まった。
今後の予算編成については、政権が変ったことで昨年までのスタイルから大きく変化しており、最終的に今年度の国債がどの程度増発され、来年度の新規国債がどの程度の規模になるのかを現時点で予測するのは難しい。
しかし、今年度の国債発行総額の149兆2044億円(補正後)、カレンダーベースでの発行額の130兆2000億円(補正後)を上回ってくることは確かなようである。